世界一周 かけあし夫婦旅行 - かけてこ

かけてこ ~世界一周かけあし夫婦旅行~

バックパック背負って世界に飛び出した夫婦の、かけあし世界一周の模様をつづったバックパッカー旅行記です ⇒サイト案内

2007年11月30日 の出来事

コーダホテル -アンマン-

早朝5時、拡声器から流れるアザーンの音が鳴り響いていた。

昨日早く寝てしまったため、こんな時間に目が覚めたようだ。アザーンの音に体を預けながら天井を眺めたりして少しボンヤリした後、トイレに行こうかと思い布団をめくる。

が、また布団をかけなおす。

寒い!!

もうすぐ12月なんだから寒いのは当然だが、それにしてもアンマンがこんなに寒いとは思わなかった。

このクリフホテルの屋上部屋は、安いだけあって暖房設備も全く無く、寒さが部屋中に染み渡っていた。

布団にくるまりながら、しばらくゴロゴロ。

このまま一日中ゴロゴロしていたいぐらいだったが、そういうわけにもいかんので、布団を出て荷物の梱包などをやった後、10時ぐらいに宿を出ることにした。


で、クリフホテルから徒歩1分の所にあるコーダホテルへ移る。

入口の扉を開けると、なにやら日本人らしき若者の絵が飾られていた。

ん、どっかで見たことがあるような・・・。誰だっけ?

ロビーには日本人がたくさんあふれていたが、その片隅にハンチングをかぶった気の弱そうな従業員風の男が座っていた。

その男は、僕らを部屋に案内してくれた後、微笑みながら温かいネスカフェを差し出してくれた。

「サンキュー!」とお礼を言うと、綺麗な日本語の発音で「ドウイタシマシテ」という声が返ってきた。


彼こそ僕らが探し求めていた男、サーメルであった。

日本人旅行者の間ではアンマンで最も有名な人物と言っても過言ではない彼の顔には、謙虚さと人の良さがあふれんばかりににじみ出ていた。

なんだか彼を見てると気持ちがホッとするなあと思いながら、ネスカフェを口に運びつつ、本棚に置かれている情報ノートに目を通す。


それにしても、かなり充実した情報ノートだ。旅に関する様々な情報が数冊の分厚いノートに日本語でぎっしり記述されていた。

彼の人柄に惹かれて、多くの旅人が彼の元(クリフホテル、コーダホテル)を訪れ、そしてこうした情報を書き記していったのだろう。サーメルへの感謝の言葉や、彼の優しい言動の数々についての記述も多くあった。


観光情報など懇切丁寧にを教えてくれる/洗濯物や食器をちょっとの間放置してたら、いつの間にか勝手に洗ってくれてた/×××ってどこに売ってるの?って聞いただけなのに、自ら進んでダッシュで買ってきたくれた/一緒に食事に行ったら必ずおごってくれる/ロビーでくつろいでると彼が自腹で購入したネスカフェを入れてくれる/お礼をしようと思ってお金やモノを渡そうと思っても、断固として受け取ってくれない・・・

などなど。

しかも、クリフ時代の話では、2万円という安月給で蟻のように働き続け、勤務していた十数年間のうち、休みがもらえたのはたった3日ほどだったという。

いやあ、ほんと頭が下がります・・・。


情報ノートをパラパラめくっていたら、気になる写真が目に入ってきた。

死に瀕したような子供の写真だった。

写真の下には「香田証生さんがイラクへ行く時にサーメルにあずけていった写真の内の1枚」と書かれていた。


香田証生・・・、イラク・・・、ん・・・、あっ!


今から遡ること3年前、テレビ画面の中で、アルカイダ兵に囲まれながら助けを求めていた青年が香田証生という名前だったこと、首を切られた彼の遺体がイラクで発見されたこと、そしてこのホテルの入口に飾られていた絵のモデルがテレビに映っていたあの香田青年であったこと・・・、そうしたことが頭の中でパズルのように組み合わさる。


さらに読み進める。


香田青年がイラクに行く前に、最後に立ち寄った宿がクリフホテルだった。

彼は、イラクの現状を自分の目で見て日本に帰ってその様子を人々に伝えたい、という思いをサーメルに伝え、周囲の皆の反対を押し切ってバグダッドへ向けて旅立ったという。


そのとき彼に頼まれてイラク行きの手配をしたのは、他ならぬサーメルだった。


もちろんそのときのイラクはとても外国人が旅できるような状況ではなく、危険極まりない無法地帯だということを知っていたサーメルは、何度も彼のイラク行きを止めようと試みた。日本大使館にも電話して彼が国境を越えるのを止めるよう呼びかけた。

しかし香田青年の熱意と行動にストップをかけることはできず、最終的にあのような惨事につながってしまったのだった・・・。


「自分があの時、止めていれば・・・」


サーメルは今でも香田青年のことを心の中で重く重く引きずっている。このコーダホテルという名前も、彼のことを忘れまいという思いで名付けたのだった。


情報ノートには他にも当時のイラクの様子などが、生々しく記載されていた。旅の延長線上にこうした危険が潜んでいるということがリアルに伝わってくる。


「ネスカフェ、もう一杯いかがですか?」


お替りをすすめてくるサーメルに、手を横に振って「ありがとう、でも要らないよ」と答える。

僕の顔を覗き込む彼の温かくて優しい顔と、窓の外に映るアンマンの穏やかな日常風景を見ていたら、なにかとても不思議な気分になった・・・。

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■参考情報
サーメルのことや香田青年の事件については、こちらのサイトの下のほうにある「サーメルストーリー」と「香田証生さんについて」に詳しい話が記載されています。

なお、本ブログの一番下(4枚目)の写真は、コーダホテルに置いてあった、香田青年について記述された以下書籍の帯です。

香田証生さんはなぜ殺されたのか』 下川祐二 著
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