2007年12月20日 の出来事 |
アンダンテホステル -ブダペスト-
寝心地の悪い寝台列車は、朝8時半頃にブダペストの東駅に到着した。
ブダペスト。
小学生の頃、クラスメートが鼻水たらしながら「自分の子供ができたら名前をブダペストにする。坂田ブダペスト」と言っていたのを聞いて、こいつアホじゃね?と思った記憶があるが、そのブダペストに到着した。
「ヨーロッパの駅」って感じのする、なかなか趣のある駅のホームに降り立ちとりあえず一息つく。

駅の出口へ向かおうと歩いていると、客引きのオバちゃんが寄ってきて、「ヘレナハウス、ヘレナハウス!」と声をかけてきた。
ヘレナハウスは、ヘレナというオバちゃんが経営するブダペストでは有名な日本人宿だ。安くて昼飯付きというのがウリらしいが、同居しているその家族のキャラが濃い~ということでも有名。
旅先で会った人から、「息子に冷蔵庫の中のものを勝手に食われた」とか「孫のオナニー姿を見た」などといった、なかなか興味深いエピソードを聞いていたこともあり、ちょっとチャンレンジしてみたい宿ではあったのだが、別の宿に泊まることに決めていたため、オバちゃんの勧誘を断り駅を出た。
アンダンテホステルという宿を目指す。
エルサレムで会った人が「ものすごくいい!」と絶賛していた日本人経営の宿だ。
最近できたみたいで、そのエルサレムの人以外からは名前を聞いたことの無い宿だったのだが、まあ絶賛するぐらいだからヘレナハウスよりはいいだろうということでその宿に泊まることに決めていたのだ。
寒空の下、体を震わせながら駅近くに停まっていたバスに乗り込む。
で、お金を払おうと財布をあさっていたら、バスの運転手が「金はいらないよ」と言ってくれた。なんかよくわからんけど、とりあえずラッキー!
バスを降りてしばらく歩くと、アンダンテホステルの入口に到着した。

服についた雪を振り落としながら中に入ると、二人の日本人の姿に目に入った。
「外は寒かったでしょう。いまコーヒーいれますね」
ここしばらく聞いたことの無かったような優しい日本語が、僕らの耳にやんわりと入ってきた。語りかけてきたその二人は、この宿のスタッフ、けいさんとトモさんだった。
これまで、成都のSim'sやバラナシの久美子ハウスなど日本人経営の宿には何軒か泊まったことがあったが、働いてるスタッフ(オーナー以外)はどこも全て現地の人々だった。
当然、一部の地域を除けば日本人を雇うよりもコストが抑えられるだろうし、求人もしやすいだろうから、それが当たり前のことだと思っていた。
が、この宿には日本人スタッフが二人もいたのだ。腰が低くてものすごく丁寧な言葉遣いの二人。
「この人たちは、一体どういう経緯があってここで働くことになったんだろう?」
目の前に差し出された暖かいコーヒーをすすりながら色々と想像してみたが、しばらく考えても答えがでなかったのでやめた。まあいいや・・・。
とりあえず荷物を部屋に置き、談話スペースで体を暖めながら、夫婦それぞれ自分の好きなことをやり始めた。
この宿には大量の漫画が置いてある。表紙が破けたシミ付きの薄汚れた本ではなく、キレイなカバーのついたピカピカの本。それが数百冊、本棚に並んでいるのだ。

久しぶりの日本の漫画に、嫁はお菓子を食べるときよりも目を輝かせながらムサボリつく。その隣で無線LANをつないで僕は快適インターネット。
それにしても、こういう嫁が退屈してないときにやるネットというのは格別だ。何も気にすることなくネットに熱中することができる。いやあ、素晴らしい!
ネットをやりまくって一段落ついた後、スタッフのけいさんと話をしていたら、どうやら彼も自分のホームページを作っているということがわかった。
そのサイトを教えてもらいアクセスしてみる。
サイトを開くと、以下のような紹介文が目に入った。
「無銭で世界一周旅行中!パソコンとデジカメ、それと人からもらった韓国行きのフェリーチケットで日本を出国。以降、基本的に人々の善意で旅を続けている」
タイトルは「けいの無銭旅行記」。
・・・そう、彼こそバックパッカーの間で伝説的存在となっている旅人、無銭旅行のけいさんだったのだ!
2001年から1円も持たずに野宿しながらママチャリで移動し続け、インドではガンジス河を1,300km手漕ぎボートで下り、世界最高峰のエベレストにも修行の末に登頂しちゃったという、とにかくものすごい旅人なのだ。
詳細については、サイト けいの無銭旅行記 をご覧ください。
もう一人のスタッフ、トモさんもチャリンコで旅するチャリダーらしく、けいさんと一緒に移動してきたらしい。
で、東欧の冬は寒いということで、暖かくなるまで(?)、ここブダペストのアンダンテホステルで住み込みバイトをしているみたいだった。
まあとにかく、すごい人たちがここブダペストで普通に働いていたわけでして、コーヒーを飲みながら何かとっても不思議な気分になったのでした。
昼過ぎにスーパーで飯を買ってきて、適当に談話室でつまんでいたら、ダルそうな声で「ざーっす」と言いながら何人かの男たちが目を擦りつつドミトリーから顔を出してきた。
そして、顔も洗わずにそこらへんのイスに適当に座り込んで、漫画や雑誌を読んだり、プレステ2の対戦ゲームで遊んだりし始めた。「今日も寒いから、外に出るのやめよう・・・」と呟きながら。
このキレイな宿に似つかわしくないこの退廃的な雰囲気・・・。う~ん、悪くないねえ。
彼らのうち何人かは、全くブダペストに長居する理由も無いのに、この宿に1ヶ月近く滞在しているみたいだった。まあ、それだけこの宿が居心地がいいってことなのだろう。
夜になり、皆でシェア飯を作って食べる。
(シェア飯って何?って方はこちらのサイトに説明載ってます)
今日のメニューはカレーライス。
さっきまで退廃的な雰囲気を漂わせていた男たちも、飯に対する情熱は相当なもののようで、かなりのコダワリを見せながら手際よく料理を作っていく。
そしてあっという間に日本で食べるのと同じようなカレーが、テーブルの上に並べられた。

でっかいペットボトル入りのワインをコップに注いで飲みながら、湯気のたつカレーをスプーンですくって口に運ぶ。
お米とよく絡んだジャカイモは、口の中でとろけるように砕けながら、僕の涙腺をほんの少し刺激した。
とても懐かしい味のする、絶妙な美味しさのカレーだった。
それにしても、設備、雰囲気、スタッフ、食事、どれをとってもこれまでの旅の中で最高の素晴らしさだ。ここまで居心地のよい場所は初めて。
街はクリスマスでお休みモードだし、この宿で長居しようかなあ・・・。

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