2008年01月31日 の出来事 |
青ずきんちゃん -サナア-
早朝、飛行機はイエメンの首都サナアへと到着した。
カイロから5時間ほどのフライトだったが、機内食を食べてすぐにグッスリと眠ることができたようで、そんなに疲れは感じない。
さて、幸福のアラビアに上陸だ。

まずは飛行機を降りて入国手続き。
30ドル払ってビザを取得した後、入国管理の窓口に並ぶ。
イエメンはイスラム色の非常に強い国だ。
これまで旅してきたヨルダンやエジプトなどのイスラム教国と比べても、格段にイスラム色が強いらしい。
比較の仕方にもよるが、パキスタンやイラン、サウジアラビアなどと同等、もしくはそれ以上だとも言われている。
というわけで、ユダヤ国家イスラエルの入出国スタンプがパスポートに押されていると、イエメンでは入国を拒否されてしまう。
イスラム世界における同胞意識の強さ、そしてイスラム対ユダヤ(=イスラエル)という敵対意識の根の深さを象徴するかのようだ。
イスラエルでは国境のネエチャンに懇願して、どうにかノー・スタンプで旅することができた我々、そのおかげで今回特に問題なくイエメンに入国することができた。
かなりアッサリとした入国審査でちょっと拍子抜けだったが、まあとりあえず普通に入国できてよかった。
空港から外へ出る前に、嫁に髪の毛が見えないよう隠させる。
イエメンではほぼ全ての女性が、アバヤと呼ばれる黒いワンピースをまとい、ヒジャーブと呼ばれる黒いベールで頭と顔を覆っている。
つまり、全身黒装束で、目の部分以外は肌を全て隠しているわけで、それが当たり前の社会なわけです。
髪の毛も含めて女性の肌の露出というのは絶対ダブー。とにかく、いかんのであります。
本来なら全身黒づくめになるのがマナーなのだろうけど、そこまで徹底することもできないため、最低限のマナーとして髪の毛だけは隠しましょうということで、嫁の頭に布を巻きつけることにした。
防災頭巾かぶってるみたいだけど、まあなんとかいけるかな・・・。

空港の前でダッハーブと呼ばれる乗合ワゴンをつかまえて、町の中心部へと向かう。
イエメンのガイドブックや地図を持ってないため、カイロで入手した情報だけが頼りなのだが、このダッハーブを乗り継いでいけば、30分ほどで町の中心部まで辿り着けるという情報は聞いている。
その辺りに日本人宿もあるらしいので、何とかそこまで着ければ後はどうにでもなるだろう。
はじめのうちは席も空いていたダッハーブだったが、現地の人たちが次々に乗り込んできて、すぐに車内は一杯になった。
ダッハーブには、スタート地点と終点以外、特定の停留所というのは無いようで、途中で降りたい人はドライバーに声をかけて降ろしてもらい、途中で乗り込みたい人は路上で手をあげて停まってもらうというシステムのようだ。
途中で人が乗り込んできても、ドライバーはスライド式のドアを閉めようとはせず、開けっ放しの状態で進み始める。どこかで車のスピードが落ちれば、その勢いでドアがスライドしてきて勝手に閉まるからだ。

車内にいるのは全て男たちだった。
そしてそれぞれが、武器を持って馬にまたがり砂漠を駆け抜けるアラブの戦士をイメージさせるような、勇ましい雰囲気を醸し出していた。
実際彼らのほとんどは、「ジャンビーア」という半月刀を帯刀している。
ジャンビーアは誇り高きイエメン人男性の魂のようなもので、立派な銀細工が施され、細かい刺繍がなされたベルトで彼らの腰に巻きつけられている。たぶん日本の武士にとっての刀のような存在なのだろうと思う。
「イエメンの治安は良い」という話は聞いているが、新たに目にする世界に、やはりちょっとした緊張は感じてしまう。
スライドして閉まるドアの大きな音を何度も耳にしながら、不思議な気分で、窮屈な車内から窓の外の景色をボーッと眺めていた。

しばらくして、ダッハーブはサナアの町の中心部に到着した。ここから10分ぐらい歩けば日本人宿に到着できるはずだ。
住所だけはわかるので、とりあえずそこを目指して歩く。
・・・が、途中で嫁がダウン。どうも体調が悪いみたいだ。
睡眠時間が少なかったせいだろうか。しょうがないので、適当な場所に嫁を置いて、一人で宿を探し回る。
それにしても不思議な町だ。
通りには、全身黒装束の女と、半月刀を差した男があふれ、旧市街のほうに目をやると褐色のお菓子のような家並みが広がっている。
しかもほとんどの男たちが、片側の頬を膨らませて何かをモグモグと食べているのだ。
なんだ、あれ・・・。
町の観察に夢中になって、宿探しをしていることを忘れてしまいそうになりながらも、なんとか目的の日本人宿を発見し、チェックインした。

宿には、日本人客が結構泊まっていた。
カイロで会ったコイタビ夫婦も泊まっていて、嫁同士で頭巾の巻き方について勉強会が始まった。
僕は、情報ノートに軽く目を通した後、サナアの町への好奇心が抑えきれず、一人で外へと繰り出すことにした。
サナアの町の様子はとても賑やかで、そして面白かった。
ガハハと笑いながら仲間たちと楽しそうに町を闊歩する陽気な男たち、黒装束から目だけを出して声をあげながら元気に野菜を売る女たち、刀を持つ大人たちに尊敬のまなざしを向けながらアチコチ元気に走り回る子供たち。
旧市街自体もとても特徴的で、おとぎ話の中で出てくるお菓子の家のような、古式ゆかしい不思議な家屋が建ち並んでいた。
ほんとに不思議だった。
目の前に広がる光景が、僕の好奇心の中に心地よく溶け込んでいく。
久しぶりに興奮を覚えるような町に出会えた気がした。

ところで、さっき男たちがモグモグやっていたのは、「カート」と呼ばれる植物だということがわかった。
見た目は普通の葉っぱだが、噛んでいくうちに覚醒作用があらわれてくるという、何とも楽しげな代物らしい。
つまりこの国の男たちは皆、昼間っから覚醒しまくりの状態にあるようだ。
カートはこの国では合法らしいし、そこら中で野菜と同じようにたくさん売っているので、そのうち試してみようと思う。
まあ何はともあれ、面白い町であることは間違いなさそうだ。

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