2008年1月30日 の出来事 |
回るオッサンたち -カイロ→サナア-
かつてアラビア半島は、大きく3つの地域に分けられていたという。
砂漠が延々と広がる、サウジアラビアを中心とした「砂のアラビア」、巨大な岩山がどこまでもあふれる、シリアやヨルダン周辺の「岩のアラビア」。
そして、古代より海のシルクロードの中継地とした栄えたイエメンを、古代ローマ人はこう呼んだそうだ。
「幸福のアラビア」
旅人たちの評判もとても良いイエメン。
この旅に出るまであまり意識することの無い国だったけど、そんな良い評判を何度も耳にするうちに、いつの間にかイエメンは僕らの行ってみたい国リストに組み込まれるようになっていた。
今日の深夜、そんなイエメンの首都サナアへ飛行機に乗って向かう。
幸福のアラビア、とても楽しみだ。

結局、エジプトには3週間ほどいたことになる。
半年とか1年とか滞在してる旅行者がザラにいるエジプトだが、かけあしで周ってる僕らにとっては、3週間というのは結構な長さだ。
まあ、それだけ見所が多くて、居心地も良かったということなのかもしれない。
そんなエジプト滞在最終日となった本日。
昼間は適当に時間をつぶしていたのだが、夕方頃、スーフィーダンスが開催されるという話を耳にし、宿に泊まってる他の人たちを誘って、スーフィーダンス見に行こうということになった。
「ヒゲのオッサンたちがひたすら回り続けるだけなんだけど、とにかくすごい!」
そんな評判を聞いて、以前からゼヒとも見てみたいと思っていたスーフィーダンス。
しかも、なんと入場料は無料らしい!太っ腹だね、エジプト!
日が暮れてからも依然として活気に満ち満ちているカイロの随一のスーク(市場)、ハーン・ハリーリの様子を横目に眺めつつ、カイロの街にちょっと名残惜しさを感じながら、我々はアズハル大学の近くにある会場のほうへと向かって歩いていった。

スーフィーダンスは週2回やってるらしいのだが、素晴らしいダンスが無料で見られるとあって、開場30分前にもかかわらず会場の前にはかなりの人が列をなして並んでいた。
「スーフィー」とは、神への無私の愛と信頼、神との合一を追求するという独特の教義を持つ、イスラム世界で生まれた神秘主義のことだ。
スーフィーダンスは、その神との合一へ至るための修行として位置付けられた宗教儀式のひとつと言われている。
列に並んでる間ヒマだったので、ヒゲのオッサンたちが回り続ける様を色々と想像してみたのだが、頭の中に浮かんでくるのは、果てしなくフワフワとした、神秘的で幻想的なダンスの様子だった。
隣で列に突っ立ってる嫁は「ジャジャジャジャ、ジャーンジャジャ♪」と楽しそうに音楽を口ずさんでいるが、明らかにスーフィーダンスを何かと勘違いしているようだ。
それ、ヒゲダンスのメロディでしょ・・・。
しばらく待った後、会場へ入場。
観客は200名以上はいるだろうか、思ったよりも大きなホールだ。
真ん中よりも少し後ろぐらいの席をなんとか確保し、ダンスが始まるのを待ってたら、舞台上に数人の男たちがノシノシと姿を現し始めた。
ヒゲ面のオッサンたちだ。
オッサンたちは楽器を手に手に、アラビアンな音楽を奏でながら軽い身のこなしで歌ったり踊ったり。
コミカルに立ち振る舞うオッサンもいたりして、思ってたよりもエンターテイメントな要素を感じるステージだ。
迫力もあって普通に面白い。

そんな、基本的に真面目だけど、ヒゲダンス的要素が5%ぐらい入ってそうなオッサンたちの演舞が一段落したところで、新たなオッサンがステージ上に登場してきた。
ものすごくカラフルな衣装に身を包んだニューフェイスのオッサンたちは、腰に巻きつけた大きな円形のスカートを遠心力風に使いこなしながら、軽いステップでクルクルと体を回転させ始めた。
「お~、これこれ!」
これぞスーフィーダンスって感じの回転ダンスが目の前で展開される。
グルグル、グルグル。回る、回る、ひたすら回る。
オッサンたちは、ネジの外れたロボットのように、延々と止まることなく体を回転し続ける。
楽曲と楽曲の合間も、衣装を脱いで変身(?)したりするときも、ひたすら回り続けるオッサンたち。
すごい。ほんとすごい・・・。
そんな感じで30分ぐらいの間、オッサンたちはずっとノンストップで回り続け、これでもかってぐらい僕らをノンストップで圧倒し続けたのだった。
いやあ、いいもんを見せてもらいました。

いいもんが見れたと満足しながら宿へと戻り、荷物を整理する。
「なんだかんだでエジプト良かったなあ」と感慨にひたりながら、荷造りしつつポケットをあさっていたら、手持ちのエジプト・ポンドがほとんどゼロに近いことが判明した。
ちょうどぴったり無くなるように計算しながら使っていたつもりだったのだが、どこかで計算が狂ってしまったようだ。これじゃあ、空港までも行けそうにない。
参ったなあ、もうちょっとあれば済みそうなんだけど。どうしよ・・・。
若干途方に暮れていたのだが、近くにケン君が立っていたので、試しに「2ポンド(約40円)めぐんで」と言ってみたら、彼は「いいよ」と言いながら快く2ポンドをめぐんでくれた。
しかも僕らへの餞別として、ポテトチップスまでプレゼントしてくれたのだった!
いやあ、ほんとありがとう。この恩は忘れません。
そんなわけで、ケン君からもらった2ポンドとポテトチップスを手にしっかりと握りしめながら、深夜のカイロ空港へと向かい、「さようなら、エジプト」とつぶやきながら、幸福のアラビア行きの飛行機にゆっくりと乗り込んだのでありました。

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