2008年1月 5日 の出来事 |
マケドニアの忍者 -ティラナ→オフリド-
ねずみ講の国アルバニアはもう十分満喫ということで、今日はお隣の国マケドニアへと向かうことにした。
ドブロブニクを出て以来、誰か日本人に会えないかなあという淡い期待を胸に生活を送ってきたが、いまだに誰にも会ってない。なので情報がほとんど無いという状態が続いている。
マケドニア・・・。
う~ん、名前からして弱そうな国だけど、まあ少なくともアルバニアよりはまともな国だろう。国旗もパッと見た感じ、親日的だしね。

とりあえずマケドニアに、「オフリド」という世界遺産の街があることだけは知っている。そして手元にある世界地図帳にも、ここティラナからオフリドまで、なんとなく行けそうな雰囲気の線が記されている。
「さすがに隣の国の世界遺産なんだから余裕で行けるっしょ!?」
というわけで、オフリドを目指して進むことにした。
朝7時半頃にティラナのサッカースタジアム付近にある、乗り合いワゴン乗場へと向かう。ここから、アルバニアの国境にあるポグラデックという町へ向かう乗り合いワゴンが出ているからだ。まずは国境へ向かわねばならない。
乗場に行くと、ポグラデック行きのワゴンはすぐに見つかった。
ちょうど我々二人を乗せて満席になったそのワゴンは、「出発シンコー!」的なノリも無いまま、乗ったとたんに急発進でポグラデックへと向けて進みだした。

ワゴンは山道を進む。
暖房の無いワゴンの中はけっこう寒いが、外の景色はなかなかキレイだ。雪をかぶった山々が目の前に悠然と広がる。
こういう景色を眺めていると、寒さや疲れ、この先の心配や不安なども薄れてくるから不思議なものだ。
2時間半ほど進んだところで、ワゴンはこじんまりした田舎町に到着し、そしてそこで降ろされた。
どうやらここがポグラデックの町らしい。
さて・・・。
国境の町と聞いていたが、国境はどこにあるんかな?
とりあえずそこらへんにいた人に「マケドニア、マケドニア」と声をかけてみると、「国境は7キロ先だ」的な返事がかえってきた。
7キロ!?
そんな距離、バックパック背負って歩けねえし・・・。
しかも国境まではバス等の公共交通機関も走ってないらしく、白タクとかで行くしかないらしい。なんだそりゃ!?
ヒッチハイクを試みたが無理そうだったので、しょうがなくそこらへんに停まっていた乗り合いの白タクをつかまえて乗り込んだ。
白タクは、ほどなくして寂しい雰囲気満点のアルバニア国境へ到着した。
まあ国境というよりもただの道と棒と小屋だけどね。

ここで出国手続き。
適当そうな顔をした出国管理官は、適当な手つきで、適当に出国スタンプをパスポートにポンと押してくれた。
ねずみ講にだまされることなく無事にアルバニア出国。おめでとう!
さて、続いてはマケドニアへの入国手続きだけど、マケドニア側の国境はどこ?
適当な出国管理官は「あっちだ」と言って、来た道と反対の方向を指さした。まあ一本道だから、その方向しかないんだけどね。
1キロほど離れているらしいが、車は全く通ってないので、指さされた方向に向かってとりあえず歩いていく。
無国籍地帯を、誰の目にも触れずにバックパック背負ってトコトコと歩く我々。雪道を歩く嫁の後ろ姿がシュールに映る。
寂しい国境・・・。

1キロほど歩いて、マケドニア国境に到着し入国手続き。これで、この旅20ヶ国目の訪問国となるマケドニアに晴れて入国だ。またまたおめでとう!
相変わらず、どうやったらオフリドへ行けるのか見当がつかないが、前方に村落が見えたのでとりあえずそこまで歩く。
後から知ったのだが、そこはスヴェティ・ナウムという名前の村で、有名な壁画が施された教会があり、マケドニアの観光スポットのひとつとなっているそうだ。
そんなこととはツユ知らず、「あっ、教会があるね」ぐらいな感じで教会の横を通り抜け、とにかくオフリド行きのバスを探しまわった。

・・・が、歩き続けてもなかなかバスが見つからないどころか、バスの情報すら手に入らない。
疲れて、そこらへんにあったベンチに腰を下ろす。
今日は教会の中で寝かせてもらうしかないかもな・・・、そんなことを考え始めた頃、ベンチのそばに立っていた屈強そうな男が声をかけてきた。
「どうしました?」
お~、英語だ!
オフリドに行きたいということを伝えると、彼は笑顔でこう言ってきた。
「私はオフリドに住んでいるんですが、いま家に帰ろうとしていたところなので一緒に行きませんか?」
お~、これこそ天の助け!
もちろんその誘いに乗っかり、彼と一緒に湖畔の道を進み、バス停にとまっていたオフリド行きのバスに乗り込んだ。
彼の名前はベンコ。
大の日本好きのようで、日本について様々なことに興味を持っているようだった。「アリガトウ」とか「サムライ」とか「ヤクザ」とか、簡単な日本語をいくつか知っているみたいだ。
とにかく、そういった日本に関することを話すときの彼の顔は、とても楽しそうで、まるで子供のようだった。
うん、国旗を見てマケドニアは「親日的」と判断したのは正しかったのかもしれない。やっぱり、人と国旗は見た目が大事ね。
バスは雪道を進む。
なんだかんだでバルカン半島もだいぶ進んできたんだなあ・・・。
車窓の景色を眺めていたら、新しい国に入ったという感慨が徐々に沸いてきた。こういう感覚ってけっこう悪くないものだ。

極真空手を習っているベンコの語る「マスタツヤマは虎を倒した」というエピソードが終わるか終わらないかぐらいのタイミングで、バスはオフリドの町に到着した。
まあ予想に違わず、静かで居心地の良さそうな町だ。
さて、新しい町に着いたらまずは宿探し、というのがいつものパターンだが、ベンコの一家が宿(プライベートルーム)を経営しているらしいので、今回はそこに泊まることにした。値段は安くはなかったが、まあ泊まるアテも無かったからちょうどよかった。
というわけで、ベンコ家へ。
家に上がると、たまたま帰郷していたベンコの弟と両親が暖かく迎えてくれた。部屋もバルコニー付きで、ストーブも置いてあるし、なかなかいい感じだ。

まずは世界遺産の町を軽く散策しようと思い、部屋に荷物を置いて「いってきます」を言うためにちょっとリビングに顔を出す。
するとリビングにいたベンコが、また子供のような顔をして色んなことを話しかけてきた。
コンジョウ、キアイ、セップク、スシ、テンプラ、ニンジャ・・・
様々なトピックを、ほんとに楽しそうに話すベンコ。
はじめはニコヤカに彼の話を聞いていた我々だったが、彼のあまりのマシンガントークぶりに、途中からちょっと嫌気がさしてきた・・・。
10分、20分、30分・・・、全く終焉を迎える様子もなく、彼の話は延々と続いていく。
「じゃあ、ちょっと外に出かけてくるんで」と何度か切り出したつもりだったが、その言葉を聞き取れてないのか、聞いていないのか、それとも無視しているのかわからないが、彼の饒舌ぶりはとどまることを知らなかった・・・。
「サムライは自ら恥をさらすぐらいなら、潔くセップクを選んだ。真っ白な雪が血に染まる様子は日本の美の象徴だ」
「本物のニンジャは、絶対に忍術を口外しない。だから世に知れ渡っている忍術というのは全部ウソっぱちだ」
「オレはニンジャになりたい。だからオレはインターネットでニンジャのことを勉強している」
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今日のベンコは「腹が痛くてちょっと調子が悪い」らしいのだが、それを全く感じさせないほどの快活ぶりで、一方的にテンションをあげながら話を進めていく。
彼の様子は「子供っぽい」というよりも、もう子供そのものといっても過言ではなかった。
盛り上がり(ベンコの)が最高潮に達した頃「これを見ろ!」と言いながら、何か黒っぽい衣装を奥の部屋から出してきた。
よく見ると、それは忍者の衣装だった・・・。
「シノビノコロモ」と言いながら、嬉しそうにその衣装の仕立ての良さなどを説明するベンコ。
どうやら大金をはたいて買ったらしい。
彼の「ニンジャ」という言葉が部屋の中に響き渡るごとに、外はどんどん暗さを増していっていた・・・。
ベンコの忍者話がひと段落した頃、今度はベンコの弟が口を開き始めた。
「写真を見るかい?」
デジカメをテレビに接続して、テレビ画面に写真を映し出す弟。
画面に映し出されるのは、ムキムキな体でボディビルやってる弟自身の写真だった・・・。
そんな感じでオフリドの空はどんどん暗くなっていき、彼らから開放されたときには外は暗くて何も見えず、店もどこも空いてないという状態になっていた。
う~ん。マケドニアの忍者、恐るべし。。
まあ、悪い人たちじゃないんだけどね・・・。
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