2008年01月26日 の出来事 |
アブシンベル観光 -アスワン→カイロ-
早朝3時すぎ。
眠い目をこすりながら階段を降りて宿のフロントに顔を出すと、宿の従業員が「おはよう。あと数分で車がくるよ」と声をかけてくれた。
彼らは早起きに慣れているのだろうかそれとも夜勤なのだろうか、僕らとは対照的に、平然とした顔つきでパッチリと目を開き、テレビに映るスポーツ番組を熱心に見入っていた。
それにしても久しぶりの超早起きだ。とりあえず眠い・・・。

ほどなくして、アブシンベルのツアーバスが宿の前までやってきた。
日本の温泉街とかを走ってそうな20人乗りぐらいの小さなバスだ。
他のホテルなどを回ってきた後にここまで来たみたいで、車の中はすでに乗客で一杯だった。
僕らに割り当てられた席は、折りたたみ式の補助席。
アブシンベルまでの3時間半、ゆっくりぐっすり眠ろうと思ってたけど、すげー乗り心地悪そう・・・。

街灯も何も無い真っ暗闇の中を温泉バスは駆け抜ける。
アブシンベルへ行くためだけに作られたような、ムダの無い真っ直ぐな道を突き進んでいく。
後部座席のほうを見ると、車の揺れにあわせて体を少し揺らしながら、嫁は寝息を立ててグッスリ寝ているようだった。
・・・が、僕は全然眠れなかった。
案の定、イスの座り心地は最悪。体がダルくダルくてしょうがないのに、目を閉じても全然眠れそうになかった。
「背もたれ」というよりも、「腰もたれ」と言ったほうがいいぐらいの高さまでしかない補助席の背もたれに体を預けながら、眠りの世界に突入できてない自分に何度も気が付き、そのたびに目を開いては何度もタメ息をついた。
う~ん、朝の通勤電車の中だったら、立ちながら吊り革を握って眠れるんだけどな。まあしょうがない。。
途中で眠ることをあきらめて、真っ暗なバスの中でボケーッとしながら時間を過ごすことに決めた。あー、ねむ・・・。
しばらく闇の中で物思いに耽りながらボンヤリ前方を眺めていたら、前の席に座ってる外人のフラフラと揺れ動く頭の輪郭が、ハッキリと浮かび上がってくるような、そんな感じがしてきた。
「外が明るくなってきたのかな・・・」
補助席から首を伸ばして窓のほうに目をやると、地平線の向こうから太陽がなんとなく顔をのぞかせ始めている様子が、なんとなくわかった。
油汚れに強い液体洗剤を油の上にポトリと落とすCMの1シーンのスローモーションにしたかのように、オレンジ色の朝焼けが真っ黒な空にジンワリジンワリと広がっていき、乾いた大地を包み込む暗闇の濃度を徐々に薄めていった。

ほんとにキレイな朝焼けだった。
寝てたら見れなかっただろうから、今日は逆に運がいいのかもしれないな・・・。
さあ一日の始まりだ!
真っ青な空が、ゴツゴツした砂漠地帯の上に「これでもかっ!」てぐらい広がりまくったぐらいのタイミングで、温泉バスはアブシンベルへと到着した。
アブシンベルは、エジプトではピラミッドに次ぐ観光名所として知られる世界的にも有名な岩窟神殿だ。
エジプト史に輝く有名ファラオ、ラムセス2世によって建造されたこの神殿は、19世紀初頭に欧米人探検家によって砂の中に埋もれた状態で発見された。
こんなすごい神殿が砂の中に長い年月埋もれていたということも驚きなのだが、さらに驚くべきは、この神殿が近年たどった稀有な運命だ。
世界でも有数の巨大ダムであるアスワン・ハイ・ダムの建設計画が発表された1960年代、アブシンベル神殿は「ダム建設に伴い水没する可能性がある」と言われ、元あった場所から移転されたのだった。
神殿の移転。
一言で「移転」と言っているが、それはものすご~く大変な事業だったそうだ。
巨大な神殿を、サイコロステーキのように狂いなく正確に切り分け、60メートルほど離れた丘の上に運び、それらをくっつけて、また全く同じ神殿を組み直す。
そんな、なんとも気合いの入った作業を4年間ぐらい繰り返して、ようやく現在の位置に「移転」できたらしい。ユネスコすげえ。

そんなイワク付きの神殿を見ようと、入口付近には早朝にもかかわらず長蛇の列ができていた。やっぱり人気のアブシンベル。
列がはけるのを20分ほど待って、ようやく遺跡内に入場。
中に入ると、テレビとかで観たことある、あの神殿がズバババーンと目に飛び込んできた。
おー、アブシンベル!

想像していた通り、やっぱりかなりのド迫力遺跡だった。いやあ、素晴らしい。
そして、ラムセス2世ってホントすごいヤツだなあと思った。
だって、神殿の入口に立ってるデカい像って全部ラムセス2世なんだよ。1体だけじゃなくて、4体すべて!
しかも神殿の中にもまた別にいるからね、あのラムセス2世のデカいやつがたくさん!しかもオシリス神というのに変身してるらしい。
どんだけ自己アピールしてんだよってツッコミを幾度となく入れながら、楽しくアブシンベル神殿を観光した我々でありました。

アブシンベル観光の後、バスはアスワン・ハイ・ダムへ向かった。このツアーは、アブシンベル以外にも色んな観光スポットに立ち寄ってくれるという、なかなか気の利いたツアーなのだ。
しかし、別にダム自体にはそんなに興味の無い我々。
わざわざ入場料を払ってまで入りたくないので、ダムの入口でバスを降りて、バナナを食いながら待機。
しばらくして、ダム敷地内から戻ってきたバスに再び乗り込んだ。
うーん、なんか疲れてきた・・・。
続いてイシス神殿へ。
なんかドラクエ3とかで出てきそうな名前だけど(星降る腕輪がある所ね)、有名で歴史的価値も高い由緒正しき遺跡らしい。
湖に浮かぶ島の上に立つこの神殿に、船に乗って向かった。
船の上から見えた遺跡の様子はなかなか風情があっていい感じだったし、遺跡の内部も神秘的な雰囲気の中に細かな壁面彫刻がたくさん施されていて、これまたいい感じだった。

・・・が、途中からなんともダルい感覚に襲われ始めた。
体がダルいというより、気持ち的にダルい感じだ。
嫁も同様の症状に見舞われてきたらしく、まだ見学時間がたくさん残ってるにもかかわらず、ツアーの集合場所に二人で戻り、そこらへんに適当に腰かけた。
うつむき加減になりながら二人で言葉をかわす。
「遺跡疲れだ・・・」
何とももったいない話だが、我々夫婦、もうエジプトの遺跡には相当な飽きを感じてきているようだった。
ルクソールの時点ですでにそれは感じていたが、見たいと思っていたアブシンベルを見終わってしまった今、もうその飽き飽き感が恥ずかしげもなくドクドクと体からあふれまくってきているのだった。
いやあ、それにしてもここまで飽きるとは・・・。
イシスを見学した後、ツアーバスは気を利かせて「切りかけのオベリスク」という観光スポットにも立ち寄ってくれた。
古代の岩切り場のようなところに、切りかけの岩があるとかなんとか言っていたが、まあこちらも興味が無いので、当然のようにパス。車中で寝ていた。
遺跡疲れです、はい。
そんな感じでようやくアスワンに帰着。
少しゆっくりした後、昨日と同じコフタの店に入り、夕食を食べながら夫婦会議を行った。
そしてその結果、「今日の夜行列車でカイロに帰ろ」ということが決定された。
たしかに体は多少疲れてはいるが、この気持ち的なダルさから逃れるにはカイロに戻るのが一番だということになったのだった。
やっぱりカイロは心が落ち着く町だし、アスワンから離れることで遺跡からも解放されるような気がする。
というわけで、アスワンの宿で出会った日本人旅行者に見送られながら、ドタバタとカイロ行きの夜行列車に乗り込み、遺跡の町アスワンを後にした我々夫婦だったのでした。


comments