2008年02月06日 の出来事 |
エチオピア上陸! -アジス-
早朝4時半。飛行機はアジスアベバの空港に到着した。
アムハラ語で「新しい花」を意味する、エチオピアの首都アジスアベバ。300万人の人口を抱える、東アフリカ有数の大都市だ。
それにしても4時半ってビミョウ・・・。
フライト時間が2時間しかなかったし、機内食が出てきて起こされたりしたので、機内で全然寝ることができなかった。
とりあえず眠い・・・。
過酷な旅路が予想される「アフリカ大陸なんとなく縦断」、徹夜ぎみのダルい体を引きずりながら、その第一関門エチオピアになんとか上陸したのだった。

まずは入国手続き。
いつものように入国カードにパスポート番号やら名前やらを書き込んで、さて窓口へ。
・・・と思いきや、近くにいた黒人が、何事か口走りながら僕のことを呼び止めてきた。
はじめは何を言ってるのかよくわからなかったが、身振り素振りからして、どうも「ペンを貸してくれ」みたいなことを言ってるのだというのが、しだいにわかってきた。
空港内に備え付けのペンも置いてないし、自分でも持ってきてないので、きっと入国カードに書き込むことができないのだろう。
ペンをそのままパクられるかもと思って軽く拒否したのだが、あまりにもしつこく懇願してくるので、しぶしぶ貸すことにした。まったくペンぐらい持っとけよ・・・。
近くの地面に座り込んで、彼が書き終えるまでボーッとしながら時間を過ごす。
ボーッとしていたら、目がトローンとしてきて、ドヨーンとした眠りの世界に落ちていってしまいそうになったが、がんばってボーッとした状態をなんとかキープする。
入国手続きが終わったら空港内のベンチとかでドヨーンと仮眠でもとろうと心に決め、そろそろ終わったかなとさっきの黒人のほうに視線を移す。
・・・と、
なんとその黒人の周囲に、10人、いや20人ぐらいの黒人の男たちが群がって、ザワザワしている様子が目に飛び込んできた!
なんだ、なんだ!? えっ、オレのペンは!?
とりあえず、そのうごめく集団の中に入り、さっきの黒人を探し出して「ペンを返してくれ!」と怒鳴り込む。
すると、「ペンはアイツが持っている」みたいなジェスチャーを返してきたので、アイツと指差されたヤツを見てみると、そのアイツが懸命に僕のペンを握り締めて、真剣な顔をしながら入国カードを書いていたのだった。
そして周囲の20人の黒人たちは、その真剣な顔をしたアイツのほうに手を伸ばしながら、「次はオレだ!」みたいなことを口々に叫んでいるようだった。
おいおい、20人でペン待ちかよ・・・。
少しあきれつつも、「もうこっちは眠いんだから!」とダルそうに言いながら、ペンをなんとか強引に取り戻す。
ちょっと悪い気もするが、さすがに20人待ちはキツいわ・・・。
ようやく窓口に並んで入国手続き。
黒くて深いシワが顔一杯に広がる入国管理官に、パスポートと入国カードを手渡すと、管理官はパスポートをパラパラと眺め、2秒ほど動きを止めた後、笑顔を顔に浮かべて僕らに何か話しかけてきた。
何を言ってるのかわからなかったが、とりあえず笑顔で返す。
すると、今度はなにやら僕らのほうに手を差し出してきた管理官。
「もしかしてワイロの要求?」と思ってちょっと身構えたが、その管理官の視線の先をよくよくたどってみると、彼があるものをじ~っと見つめていることに気が付いた。
僕のペンだった。
またペンかよ・・・。失笑しながら管理官にペンを貸すと、まるで3歳ぐらいの子供のように、そのシワのあふれる顔中に嬉しそうな表情を浮かべ、僕のペンで書類にスラスラと諸事項を書き込み始めた。
しかし、日常的にペンを使うはずの空港の入国管理官ですらペンを持っていないとは・・・。
大工のくせに、現場に来て、通りがかりの人に「ノコギリを貸してください」と言ってるようなもんだ。
手続きが終わってもなかなかペンを返そうとしない管理官から、また強引にペンを取り戻し、エチオピアの先制パンチに体をヨロけさせつつ、空港のロビーへと足を進めていったのだった。

なんとか無事にペンとともに入国を果たした我々、空港内のベンチに座って仮眠。
300万人を抱える首都の空港なだけあって、まあ普通に空港内にベンチが設置してあったので、そこに腰かけ、荷物も盗まれないようチェーンでベンチにくくりつけて、ゆったりドヨーンと仮眠をとることができたのだった。
あふれかえる黒人たち、踊り狂う少数民族、大地を真っ赤に染める夕焼け、ライオン、ゾウ、キリン・・・
仮眠中、そういったものが夢の中に次々と現れ、浅い眠りの中にいる僕に、これから始まるアフリカの旅に対する期待と不安の入り混じった何とも言えない感覚を呼び起こさせる。
チュン、チュン、チュン
広大な大自然の中、太陽が地平線から顔をのぞかせると、鳥たちが一斉にさえずり始め、一日の始まりを告げる。まるで自分たちの鳴き声が太陽を地平線から引きずり上げる原動力なのだと言わんばかりに、鳥たちは一心不乱に青みがかっていく空に向かってその鳴き声を響かせ続ける・・・。
そんないかにもアフリカって感じのステレオタイプな世界が夢の中に広がってきたとき、ふと目が覚めた。
夢か・・・。
目が覚めた瞬間、不思議な気分だった。
空港という場所にいるせいもあって、今自分たちがエチオピアにいるということ、そして夢の中に出てきたような世界にこれから足を踏み入れていくんだということが、なんだか信じられなかったのかもしれない。
チュン、チュン、チュン
寝起きで頭がボーッとしているせいか、まだ夢の中にいた鳥たちのさえずりが耳の中に響いている。
時計を見ると7時過ぎ。2時間ぐらいは眠れたようだ。
さて動き始めるか。
ベンチから腰を上げようとした瞬間、僕の荷物から10センチほど離れたところに、上から何かがポトッと落ちてくるのが目に入った。
チュン、チュン、チュン
上を見上げてみる。
えっ、・・・鳥?
屋根のある空港の中には、たくさんの鳥たちがバタバタ飛んだりマッタリ休憩したりしていて、普通に自由に元気に鳴いていた。
んん・・・。
ますます寝起きの頭の中が混乱してボーッとしてきたが、数秒間、嫁を顔を見合わせた後、「まあ、そういう所にやってきたんだ」と二人で納得することにして、ポトッと落ちてきたフンをヒョイと避けつつ、妙に現実的な気分で空港の外に広がるアジスアベバの街へと足を進めていったのだった。


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