2008年2月13日 の出来事 |
早朝の運動会 -アルバミンチ→ジンカ-
早朝4時50分。
真っ暗闇の中を歩いて辿り着いたアルバミンチのバスターミナルは、まだ閉まっているようだった。ゲートが開く5時までまだ少し時間がある。
ゲートの前に目を移すと何かがゴソゴソと蠢いていて、その中に無数の小さな白いポッチが見えた。
・・・人の目だ。
よく見ると、暗闇の中に100人近い黒人たちが座り込んでいて、僕らのほうにギョロギョロと白い目を向けているのだった。

ゴゴゴゴゴ・・・。
ゲートの門が開く。と同時に、目の前がほんのり白くなった。
電気がついて明るくなったというわけではなく、座り込んでいた人たちが一斉に門の中へ走っていき、彼らのまき散らす砂ぼこりのせいで、暗闇が白く色づいたのだった。
「やばい、先を越される!」
嫁の手を引っ張って、負けじと門の中へと走って入っていく。バックパックは重たいし、視界も悪いし、朝早すぎて超眠いしで、ツライのはたしかだが負けるわけにはいかない。
次の目的地ジンカ行きバスは一日一便。この席取り合戦に負けてしまったら、また明日のこの時間にここに来なければならなくなるのだ。
「ジンカ、ジンカ!」
大きさ的にも見た感じ的にも小学校のグラウンドみたいなバスターミナルの中に、何十台かのバスがバラバラに停まっているのがウッスラと見えるが、それぞれがどこ行きのバスなのかは全くわからない。
とりあえず、思いっきり叫びながら、思いっきり走りながら、ジンカ行きのバスを探すしかない。
誰もが皆、同じように叫びながら走っていた。暗闇の中の運動会だ。
「ジンカ、ジンカ!」
何台かのバスが停まっている奥のほうのポイントへ行き、叫びながら探す。
叫びながらも、耳から入ってくる音に集中する。
それぞれのバスの横に立っているドライバーが、「このバスは×××行きだよ」と声を出しているからだ。バスの車体に行き先が書いてあるわけではないので、その声だけが頼りだ。
「ん・・・、あそこだ!」
貧乏学生たちの作る闇鍋のように、色んな叫び声がゴチャゴチャ混ぜ混ぜになって暗闇に響き渡る中、「ジンカ」という声が一瞬耳に入ってきた。
全速力で声のする方向へ向かい、声の主を探し当てると、その人は自分の横にあるバスを指差しながら、軽い感じで「ジンカ行きだよ」と声を出していたのだった。
幸いにも、乗客はまだほとんど乗っていない。
よかった・・・。
荷物は屋根載せ式のようだ。自分たちでバスの屋根に上ってバックパックを載せ、それからバスの中へと乗り込んだ。
とりあえず眠い・・・。
ウトウトしながら出発までの時間を過ごす。
僕らの乗った直後に、ぞくぞくと客がバスに乗ってきて、あっという間に車内は人と荷物でギュウギュウ満杯になってしまった。もう少しバスの発見が遅れていたら危ないところだった。
と、バスの入口のところに、シンペイ君の姿が見えた。
そういえば、昨日彼と話したとき「気が向いたら、明日ジンカに行くかも」と言っていたのだ。
ドライバーに向かって、身振り手振りで「乗せて」と主張するシンペイ君。
それに対して、「今日はムリだ。また明日来い」とアッサリ答えるドライバー。
その返答は、理にかなっていないようで、理にかなっていた。
カワイそうに・・・。
人と荷物でごった返すバスの中に埋もれる僕たちに向かって、彼は「じゃあ、またどこかで!」と明るく声をかけ、そしてバスのもとを去っていった。
早朝5時半の出来事だった。

バスは、かなりガタガタでボロボロの道を走って行く。
次なるジンカの村は、かなり奥地のほうにあると聞いているが、その情報通り、窓の外に広がる風景は、バスが進むにつれ、どんどんプリミティブな感じになっていった。素朴というかなんというか・・・。
ジンカの村に行く目的は、そこに集まる少数民族に会うためだ。
テレビの世界でしか見たことの無いようなあの少数民族たちが、ジンカの村で開かれるマーケットに、周辺の集落から買物のためワンサカやって来るらしいのだ。なんでも唇にデカい円盤をはめこんだ民族とかもいるらしい。
窓の外を見ると、少数民族らしき人の姿が目に入ってきた。
イメージどおり半裸の体に布切れをまとい、ホッソリとした腕・足・首にジャラジャラした装飾品を身につけ、サトウキビを豪快にかじっていた。
そして、なぜか猟銃のようなものを肩からさげていた。
部族対立などが絶えないのだろうか、それにしても不釣合いでヘンテコな組み合わせだった・・・。

8時間ほどでバスはジンカの村に到着した。想像通り、ノンビリ感満点のホノボノとした小さな村だ。
今日は、早起きして、走って、叫んで、ガタガタ揺られて、けっこう疲れがたまっていたので、バスターミナルのすぐ近くにあった「ゴウホテル」という宿に泊まることにした。
そういえば誰かが「ゴウホテルは、ジンカで一、二を争うほど有名なホテルだ」と言っていた気がするが、そもそもこの村には5軒ぐらいしか宿がなさそうなので、あまり意味の無い情報だなと思った。
停電中で電気のつかない部屋の中、いつものようにビニールシートをベッドの上に敷き、その上に寝そべって日が暮れるまでボーッとしたり、外を眺めたり。
日が暮れて部屋の中が暗くなると、しばらくしてから急に思い出したかのように、電気がパチパチッと点灯し、くすんだ色をした部屋の中を明るく照らし出したのだった。

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