2008年2月18日 の出来事 |
ラジオ係の思い出 -コンソ→モヤレ-
早朝4時半に起床し、ロウソクに火を灯す。
圧倒的に眠いが、朦朧とする意識を奮い立たせて、なんとか朝の準備を整え始める。
今日のモヤレ行きのバスも朝5時発なのだ。
思えば、エチオピアに入って以来、毎日のように早起きが続いている。
エチオピアで訪れた、アジスアベバ、シャシャマネ、アルバミンチ、ジンカ、コンソ、それらの都市をつなぐ全てのバスが、早朝5時から6時発だったのだ。

こんなに頻繁に早起きするのは、たぶん20年前の夏休み以来だと思う。
その頃、僕は小学校の町内会で「ラジオ係」という大役をまかされていた。
少しメカニックな感じのする名前ではあるが、実際は夏休みの朝のラジオ体操のときに、毎日ラジカセを会場へ持っていくという、それだけの係だった。
早起きが超苦手な僕にとっては、これ以上の貧乏クジは無いと思えるぐらい損な役割だったのだが、町内の他の人たちに迷惑をかけるわけにもいけないので、イヤイヤながらもなんとか毎日早起きし、役割を全うしたのだった。
そしてその時、「もう一生、こんな早起き生活は送りたくない」と子供ながらに思ったものだったが、20年後のここアフリカ大陸はエチオピアで、そのラジオ係時代の早起き生活が復活したのだった。
まったく、悲しいという以外ない。
しかしまあ、今日でそんな早起き生活ともお別れだ。少なくとも明日にはエチオピアを脱出して、ケニアに入ってるはず。

しかし、バスは5時になってもやってこなかった。
モヤレ行きのバスはこの宿の敷地内から出るらしいのだが、敷地内を見渡しても、全くそんなバスは見当たらない。
30分ぐらい待った後、さすがにおかしいなあと思い、宿の従業員をたたき起こして聞いてみた。
すると、寝起きで不機嫌な顔をした従業員の口から、「バスは5時発だ」という返事がかえってきた。
「だからもう5時過ぎてるじゃん!」と一瞬思ったが、途中から、彼の意味しているのが、普通の5時のことじゃなくて、エチオピア時間の5時だということがわかった。
つまり昼の11時発。
なんだよ、まったく。。
エチオピアのバスはいつも早朝発だったので、昨日出発時間を聞いたときに、普通の時間かエチオピア時間かを確認せず、勝手に早朝5時発だと判断してしまっていたのだった。
しくじった・・・。
結局バスは、昼11時からさらに遅れること1時間、正午12時になってから、やっと僕らの前に姿を現した。
つまり、普通の5時発ではなく、エチオピア時間の5時発だったバスは、それから1時間遅れのエチオピア時間6時になって、ようやく現れたわけであります。あー、ややこしい。

1時間遅れてきたくせに、乗務員は僕らに「早く乗れ!」と怒鳴りつけてきた。
バックパックを急いで屋根の上に載せた後、車体に「Konso Express」と書かれたそのバスの中へと乗り込む。
宿の従業員に手配してもらったおかげで、僕らは運転手の隣の席、つまり助手席を確保してもらえていた。一番揺れが少ないベストな席だ。
が・・・、バスの中には、ものすごい人があふれていて、なかなか助手席まで辿り着くことができない。
気持ち悪くて吐きそうになるぐらいの人ゴミだ。こりゃひどい。
結局、汗やホコリの臭いが充満する人波の中を、かきわけかきわけ、どうにか前方へと進み、5分ぐらいかかってようやく助手席に座ることができた。
あ~疲れた。
それにしても、このバスの過剰積載ぶりはひどい。インドやネパールでも目にしなかったほどの、過剰すぎる人の乗せっぷり、荷物の載せっぷりだ。
バスの屋根の上には、ズタ袋に入った穀物やら木の枝やらが山のように積み上げられ、バスの中には100人ほどの人たちが乗り込んでいた。
そして僕の座席の背もたれの上には、知らない人が勝手に座っており、そいつのお尻が僕の後頭部にペタッとくっついていた・・・。

まあしかし助手席ということもあって、運転中はかなり快適だった。
未舗装でガタガタっぽい道が続くが、そんなに揺れは伝わってこないし、フロントガラス越しに、広大なエチオピアの自然風景も見渡せる。
砂ぼこりまみれで、パッとしないといえばパッとしない景色ではあったが、それでもバスの前を横切る牛や山羊の群れ、パカパカと走るラクダの群れなどを目撃できたりして、なかなか楽しかった。
助手席を確保してもらったのは、やはり正解だったね。

で、何度か休憩をはさんだり、パンク修理タイムを3回ぐらいはさんだりしながら、Konso Expressは夜8時半頃にようやくモヤレの町に到着。
着いたときには、外はもう真っ暗だった。
できれば今日のうちにケニアまで入っておきたかったが、今日はもう国境のゲートは閉じてしまったらしい。
しょうがない、ケニアは明日だ。
歩き回って適当に宿を探し、チェックイン。
断水でシャワーは出ないし、部屋の中は溶け出したロウソクのロウでベタベタしてるし、床には大量のゴキブリがゴソゴソと動き回ってるしで、なかなかイケてない宿だったが、まあ寝れればそれで十分だ。
他の宿に泊まったところで、どうせ同じようなもんだろう。
ベッドの上に敷くビニールシートを取り出そうとバックパックを広げると、中から大量のトウモロコシの粒が出てきた。
バスの屋根の上で揺られているうちに、他の荷物から漏れ出して移ってきたのだろう。
「まったく最後までやってくれるなあ・・・」
そんなことをつぶやきながら床にコロコロと転がっていくトウモロコシの粒を眺めていたら、なんだかラジオ係をやっていた夏休みの最終日みたいな、ちょっと寂しいようなスッキリしたような何とも言えない気分に包まれたのだった。
エチオピア最後の夜だった。

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