2008年2月20日 の出来事 |
トラック荷台移動(2) -モヤレ→ナイロビ-
昼過ぎ頃、トラックはゆっくりと停車した。
どうやら休憩時間のようだ。
他のトラックも何台か停まっているので、ここは共同の休憩所みたいなところなのだろう。高速のサービスエリア的な。
だけど、そこにはカフェもなければ食堂も無かった。ガソリンスタンドも無ければ、トイレも無かった。
ただ、ボロボロの手作り民家みたいなのが、道端に数軒建っているだけだった。

嫁は「降りるのすらダルい」と言って、その場を動こうとしなかった。
たしかに、この3、4時間で体はもうボロボロになっていた。
体中の関節が変な音を立ててるような気がしたし、肩から腕にかけての筋肉の感覚自体が、なにか宙をフワフワ漂っているような感じすらした。
嫁を置いて一人でトラックを降り、草むらで小便をした後、何か食べるものが売ってないかと、道端の民家に顔を出す。
民家の軒先には、水とお菓子が何種類か置いてあった。
ほんとはボリュームのある弁当でも食べたいところだが、そんなものあるはずがないので、しょうがなくウエハースを購入。
荷台に戻ると、そのショボいウエハースを見た嫁が、前方をボーッと眺めながらこうつぶやいた。
「あー、牛が食いたい・・・」
前方には、荷台の上にたくさんの乗客を乗せた別のトラックが停車していた。
そして、そのトラックの荷台の中では、尖った角を持つたくさんの牛たちがモソモソとうごめいていた・・・。

休憩後、トラックはこれまでよりさらにゴツゴツした道を進み始めた。
他の乗客の話によると、このあたりは例の武装強盗団の多発エリアらしい。
それを考慮して、今回は貴重品の持ち方もちょっと工夫はしていたが、それでもやっぱり警戒しないわけにはいかなかった。
そんなのにやられて金品を奪われたら、即刻この旅が終わってしまうかもしれないのだ。
トラックの荷台には、その強盗団対策として2名の警察が乗り込んでいた。一番見晴らしの良い荷台の隅に、僕らと同じように座り込んでいた。
二人とも銃口の長い銃を持ち、迷彩服を身にまとっていたが、しかし彼らは誰がどう見ても、明らかに弱そうだった。
体は痩せていて栄養が足りて無さそうだったし、顔の表情も気合いが抜けてて、二日酔いのオッサンみたいだったし、ほんとに全く頼りなかった・・・。
そんな武装強盗団多発エリアで、ちょっと変な動きをする車が前方から近づいてきた。ジグザグしながらこちらのほうへ向かってくる。
なんとなく怪しい・・・。
やばいかもと思ってちょっと緊張したのだが、その車は普通にうちらのトラックの横をスーッと通り過ぎていっただけだった。
そもそも車が通ること自体が少ないので、ただ単に思い過ごしで怪しく感じてしまっただけかもしれないが、もしかしたら警察の姿を見て、恐れをなして逃げていったのかもしれない。
ふぅと一息つきながら、警察のほうに目をやる。
さぞかし緊張感のある構えをしてるんだろうなと思って見てみたのだが、よく見ると二人とも普通に寝ていた。
おいおい・・・。

夕方ぐらいから腹の具合がヤバくなってきた。
今日はウエハースしか食ってないはずだが、なぜか昼過ぎぐらいから腹の調子が悪い。ゲリがあふれ出てきそうな不安定感だ。
はじめのうちはまだ耐えられそうだったのだが、トラックの揺れにお腹が刺激され続けたせいか、夕方ぐらいから、いよいよヤバくなってきた。
う~ん、これは野グソするしかない。
そう思い、スワヒリ語でトイレを意味する「Choo!」という言葉を連発する。が、トラックは全く停まる気配は無かった。
乗客たちに協力してもらってトラックを停めてもらおうと思い、「Choo! Choo!」と周りの人たちに言いまくるが、「何を言ってるんだ?」というような顔をされるだけで、全く相手にされない。
ヤバいなあと思い、必死の形相をしながらずっと言い続けていたら、5分ぐらいしてから、乗客のうちの一人が「あっ、Chooね」みたいな感じで理解を示してくれた。
そして、ズタ袋の隙間をゴソゴソとさぐった後、あるものを僕の目の前に差し出してきた。
ペットボトルだった。
しかも、そのペットボトルの中には、すでにオロナミンCみたいな黄色い液体が半分ぐらい入っていたのだった・・・。
いやいや、小のほうじゃなくて大のほうなんだけど。。

それから30分ぐらいガマンしていたら、検問ポイントみたいな場所でトラックが停車した。
乗客たちをかきわけて急いで荷台を降り、草むらにしゃがみこんでアフリカの大地へ噴出!
その瞬間、体中の緊張がほどけていくような不思議な感じがした。
・・・いやあ助かった、ほんと危なかった。
野グソ中にトラックが出発してしまわないか心配だったので、トラックのほうをじっと眺めていたら、荷台から男性乗客たちが数人降りてきて、地面にひざまずき始めた。
そして、何か言葉を発しながら、ユックリと地面に頭をこすりつけ始めた。
ムスリムの礼拝の時間だ!
ケニアといえばキリスト教のイメージが強いが、イスラム教徒も何%か暮らしている。もしかしたら、この礼拝のためにトラックは停車したのかもしれない。
彼らが祈りを捧げるメッカの方角に僕がいなかったのは幸いだったが、それにしてもとても申し訳ない気分だった。
こんな神聖な時間にこんなことやってて、本当にすみません・・・。
赤道の真っ赤な太陽は、真っ直ぐな地平線にその身を沈めながら、草むらにしゃがみこんだ僕と、広大なアフリカの大地を、少し悲しげな色で赤く染めていったのだった。

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