2008年2月22日 の出来事 |
ダウンタウンを散歩 -ナイロビ-
昨日早く寝たため、今日は結構早い時間に目が覚めたのだが、なかなかベッドから体を起こすことができなかった。どうやら体全体がひどい筋肉痛のようだ。
あれだけのしんどい移動だったのだから当然なのかもなあ・・・。
そんなことを考えながら朝飯を食べつつ、宿のロビーで情報ノートをペラペラとめくる。

ここ「ニュー・ケニア・ロッジ」は、アフリカでは有名な日本人宿だ。
治安の悪いダウンタウンの入口付近にあるのだが、繁華街やスーパーも近くて色々と便利だし、簡易的な調理器具も置いてあって自炊も可、情報ノートも置いてあって情報も集めやすい、ということでアフリカを旅する数多くの日本人バックパッカーをひきつけてきた。
とはいえ、大統領選挙に伴う暴動の影響で、ケニア自体を旅する人が少ないらしく、うちら以外に2人の日本人しか泊まってなかった。
そのうちの一人はヤマト君。
彼とはエジプトのアスワンで一度出会っていた。同じ宿に泊まってて、アフリカの縦断方法について、一緒に色々と語りあった記憶がある。
そのときは別れ際に「じゃあ、またどこかで~」などと言っていたのだが、その言葉通り、ここナイロビで1ヶ月ぶりに再会することとなった。
こういう偶然の再会も日本人宿の楽しみのひとつだ。
ヤマト君は、昨日までケニア山にトレッキングに行っていたようだが、以前と変わらず明るく元気な表情をしていた。
もう一人はアライさん。
白髪混じりの初老の男性だが、アフリカ大陸横断中の正真正銘のバックパッカーで、色んな面でかなりのツワモノだった。
ナイロビには、もう3ヶ月近く滞在しているそうで、あの暴動の時期も体験したらしい。
「あの時期は車も全く走ってなくて、お店はどこも閉まってたんだけど、飲み屋だけはなぜか開いてたんですよ。それから飲み屋通いが続いちゃってねえ・・・」
ナイロビのことを語るアライさんは、とても楽しそうだった。
時折見せる子供のような表情が、言葉以上の説得力で、この街の魅力を僕らに語りかけてきた。
ついつい「危ない」という点が強調されがちなナイロビの街だけど、この人と話していたら、なんだかそんなことはすごくちっぽけなことのように思えてしまうのだった。

そんな二人と昼飯を食べた後、ダウンタウンの中へと散歩に行った。
超危険地帯と言われているナイロビのダウンタウンだが、不思議にそこまで恐怖は感じなかった。
金目のものを持ち歩いてなかったせいもあるが、アライさんと一緒にいるというのが大きな安心感につながっていたのかもしれない。
この人は3ヶ月間、毎日一人でこの辺りをフラフラ歩いてるのに、これまで全く危険な目に遭ったことがないらしいのだ。
ナイロビのダウンタウンの町並みはとても刺激的だった。
そこには、これまで目にしたことの無いような、でも「いかにも」って感じのするような、そんな光景が広がっていた。
通りにはテレビで出てきそうな古びた掘っ立て小屋が建ち並び、道の脇には昼間からヒマそうにしてる大人たちがたくさん座り込んでいた。
狭い路地は、入口から出口まで、得体の知れない大量のゴミで埋め尽くされており、交差点の横では、ギラギラした目つきの男とフニャフニャした目つきの男が、競い合うようにして残飯をあさっていた。
アライさんに連れられて、ボロボロの小屋のような薄暗い酒場へ入ると、麦茶用の容器みたいなものになみなみ注がれた1.5リットルぐらいの酒が出てきた。
植物の実から作った酒らしいが、これで25シリング(約38円)だというから、たぶん密造酒か何かなのだろう。
まあしかし昼間から飲む酒ってのはいいもんだなあ、そう思いながらその変わった味のする酒をゆっくりゆっくり愉しんでいたら、ふと頭の中に2つの景色が浮かんできた。
それは、2日前にトラックの荷台の上から眺めたケニアの田舎風景と、ここから1キロほど離れた場所に乱立する高層ビルの景色だった。


「その2つの景色の延長線上に、このダウンタウンがあるのかなあ・・・」
国内での激しい貧富の差、地方と都市とのインフラ格差・収入格差、その結果としての都市部への大量の人口流入、それがこうしたスラムのような光景を生み出しているのは疑いようの無い事実だった。
だけど、いくら頭の中でその2つをミックスさせても、この目の前に広がるダウンタウンの光景には全然結びつかなかった。
どう考えても、三者は全く違う次元にあるもののような気がしてならなかった。
それぞれが極端すぎて、個性的すぎて、混じり合ったり絡み合ったりすることが無いような気がしたのだ。
ただ単に僕の想像力が欠如しているだけなのかもしれないが、それらを同じ土俵の上で考えることは、ものすごく難しいことのように思えた。
子供の頃、キュウリにハチミツをかけて食べたらメロンの味がして、すごく納得できなかった記憶があるが、まあそれに近いような何ともいえない不思議な気分がした・・・。

麦茶容器の酒を飲み干して酒場を後にし、ホロ酔い気分でダウンタウンを再び散歩していたら、薄汚れた川にかかる小さな橋が見えてきた。
「この橋の先は、ちょっと危ないのでやめときましょう」
そんなアライさんの言葉を聞いたら、リアルな恐怖心が芽生えて、少し酔いが覚めた。
それと同時に、今日は筋肉痛だったということを思い出し、足をちょっと引き摺らせながら宿への道を戻っていったのだった。
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