2008年3月 6日 の出来事 |
風にヒラヒラ -ザンジバル→ダルエスサラーム-
朝日を眺めながら起床。じつに気分のいい朝だ。
「たぶん乾くよね」
とりあえず洗濯物をビーチベッドの上に並べて干してみる。
ここを出るまであと1、2時間ほどしかないが、潮が引いて干上がった朝の海を眺めていたら、なんだかすぐに乾くような気がして、勢いで洗濯してしまったのだ。

昨日と同じようにリゾートチックな朝食を食べた後、身支度を整える。
ザンジバルの美しいビーチ。
本当はこの天国のような空間にもっとずっと長く滞在していたい。
早朝の運動会で疲れた足腰や、トラックの荷台の上で痛めつけられた体を、ビーチに寝そべりながらユッタリとジンワリと癒したい。
が、この「アフリカ大陸なんとなく縦断」作戦は、まだ半分ぐらいまでしか進んでない状況であり、ここで気持ちを緩めてノンビリモードに突入してしまうわけにはいかないのだ。
しかもアフリカ大陸は南に行くに従って物価も上がっていくみたいなので、こんな豪華なビーチリゾートで散財してしまっていたら、この先、金銭面でも苦しくなるのが目に見えている。
というわけで、わずか2泊3日の滞在でこの美しいビーチを後にすることに決めた我々、後ろ髪を引かれる思いで守衛のマサイ族に別れを告げ、半乾きの洗濯物を取り込んで、ストーンタウン行きのワゴンに乗り込んだ。

ワゴンでの移動中、半乾きの洗濯物を乾かそうと、窓を開けて水着やら下着やら10枚ぐらいを外の風に当てながらヒラヒラとはためかせる。
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昔、タイを旅していたときのこと。
半乾きのパンツを同じように移動中の列車の窓際に干して、乾かそうと試みたことがあった。
そのときはパンツを2枚しか持っていってなかったのだが、着用中のパンツはすでに3日間ほどはき続けていたため、もう1枚のパンツをどうしても移動中に乾かしておきたかったのだ。結構キレイ好きなので。
しかし、タイの風を甘く見ていた。
窓際に洗濯バサミでしっかりと固定していたはずの僕のパンツは、大木さえも倒すと言われる熱帯地方特有の突風に吹き飛ばされ、一瞬のうちにして窓の外へと飛び立っていってしまったのだった。
列車の進行方向と真逆の方向へ、まるで「サヨナラ」と手を振っているかのように、ヒラヒラと飛んでいった僕のパンツ。
今でもあのシーンがスローモーションのように頭に思い浮かぶ。
あのパンツは一体どこへ行ってしまったのだろうか。どこかの親切な人に拾われて、今でもしっかりとタイ人の股間をガードし続けているんだろうか・・・。

そんなことを考えていたら、いつの間にかワゴンはストーンタウンへと到着した。
風にさらされていた洗濯物は、完全に乾ききったようだ。ワゴンを降り、「乾いたよ」と嫁に洗濯物を渡す。
すると嫁は、洗濯物の乾き具合を確認した後、一瞬不思議そうな顔をしてから、こう切り出した。
「私の水着のパンツがない・・・」
たしかに嫁の手元にはビキニのトップスしか見当たらなかった。
嫁の顔が徐々に怒りの表情へと変わっていく。
やばい・・・。
明らかに怒りの矛先は、さっきまで窓際で洗濯物を乾かしていた僕のほうへ向けられていた。
もしかしたら知らない間に水着のパンツだけ窓の外へ飛ばされてしまったのかもしれない・・・。
防衛本能が働き、タイのパンツのことを話して「わかるよその気持ち」的な方向に持っていこうと一瞬思った。
が、「結局1週間ぐらい同じパンツで何とかやりくりしてねえ」などとシミジミ語ったところで、嫁の怒りが収まらないことは誰の目から見ても明らかだった。
他に言い訳をしたところで確実に火に油を注ぐ結果になるのはわかっていたので、謝るしかないと思い、とりあえず「ごめんなさい」と口に出す。
とその瞬間、嫁の口からこんな言葉が飛び出してきた。
「あ、あった~♪」
嫁の水着パンツは、ワゴンの停まっていた位置から2~3メートルほど離れたところにポトンと可愛らしく落ちていた。
いやあ、よかった、よかった・・・。
あやうく嫁の怒りの鉄拳で火ダルマ状態にされるところだった。危ない危ない。やっぱり夫婦は仲良くなきゃね。

数日前まで泊まっていたストーンタウンの宿へ戻ると、そこに宿泊中のコイタビ夫婦と再会した。
彼らは、今日の夜行フェリーでダルエスサラームへと戻るみたいだ。
うちらは、今日はストーンタウンに1泊して、翌日のフェリーでダルエスへ戻るつもりだった。ダルエスから先はタンザン鉄道での長い移動が待っているので、少し体を休めてから出発しようと思っていたのだ。
が、コイタビ夫婦だけでなく、ダルエスで出会ったユウスケさんも、今日の夜行フェリーで戻るということを聞き、「じゃあ、うちらも」とあっさり考えを改め、便乗して一緒に夜行フェリーに乗ることに決めたのでありました。
やっぱり大人数のほうが旅路は楽しいですから。

ストーンタウンの海を眺めながら、フェリーの出発まで時間をつぶす。
このあたりの海はたいしてキレイではないけど、でもホンワカとした生活感が漂っていて、それはそれで結構いい感じだ。
すぐ近くで子供たちが、キャッキャッとはしゃぎながら、かわりばんこで海に飛び込んで遊んでいた。
とてもほほえましい光景だった。
「ザンジバルとお別れするのはちょっと寂しいよなあ」みたいなことを嫁に話しながら、夜の港に停泊中のフェリーへと乗り込む。
アフリカ大陸のボーナスステージ的な島ザンジバル。そんな島を離れ、またこれから新しい旅路が始まる。
「寂しいけど、これから先また楽しいことが待ってるんじゃないの」
そんな嫁の言葉にウンウンとうなずきながら、人であふれかえる船内へとバックパックを背負って僕らはゆっくりと入っていった。
これから先の数日間、またパンツを替えられない日々が続くということも知らずに・・・。
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