2008年3月25日 の出来事 |
風に吹かれて喜望峰 -ケープタウン-
今日から日本人宿に移ることにした。
イースター休暇もだいぶピークが過ぎたようで、今日ようやく空きが出て泊まれるようになったのだ。
まあ昨日までの中国人宿もアジアンな感じで悪くは無かったのだが、立地的にも設備的にもキレイさ的にもこっちのほうが数段レベルが高いのは間違いない。
「キャット&ムース」という名前のその宿に入ると、何人かの日本人宿泊客が暖かく迎えてくれた。
これからまた楽しい宿生活が送れそうだ。

さて、昨日に続いて今日も我々アクティブに活動します。
向かう先は、ずばり喜望峰!
そう、この「アフリカ大陸なんとなく縦断」の最終目的地であります。
紆余曲折あったアフリカの旅だったけど、いよいよいよいよ最終局面。喜望峰に到達できれば、長かったこのなんとなく縦断も終了です。
まあでも明日以降もしばらくの間は、南アにいるつもりだけどね。
ケープタウンから喜望峰までは約70キロ。
車に乗って日帰りで行くのが定番らしいのだが、せっかくなのでバイクに2人乗りしていくことにした。
風に吹かれながらアフリカの端っこへ向かうって、なんとなくロマンを感じるでしょ?
まあ乗るのは原付みたいなやつだけど。
というわけで、宿のすぐ横にあるレンタバイクの店でバイクを借りて、さあ出発!

世界的に有名な観光地なだけあって、喜望峰までの道はすごく整備されててバイクもスイスイ。
しかも海沿いを走るので、すっごく気持ちがいい景色が広がっていて、なんだかとってもいい感じだ!
だけど、途中からバイクに乗ってきたことをものすごく後悔しはじめた。
・・・風がものすごく強いのだ。
アフリカ大陸の端っこに吹きすさぶ風は、予想をはるかに凌ぐ凄まじさで、途中からまるで嵐の中を進んでいるような気がしてきた。
前かがみになっていないと、風を正面から受けて南大西洋の海の中に吹っ飛ばされてしまいそうだ。
口の周りに少し血が垂れはじめた。
さっき小石みたいなのが飛んできて顔をかすめていったのだが、もしかしたらそれで鼻の頭あたりが切れてしまったのかもしれない。
海のほうを見ると、強風のためか、ウネるように激しい波がゴーッという音をたてながら岸に向かって押し寄せていた。

1993年、僕が中学生の頃、地元の熊本に大きな台風が直撃した。
まあ九州なので台風なんて当たり前のように毎年やってくるのだが、その日に来たやつは他とは比べ物にならないほど、ものすごく憎ったらしい台風だった。
その台風は、衛星放送でサッカーW杯のアジア予選の試合中継が行われる日にやってきたのだ。
1993年は、初のW杯出場を目指し、日本全国がものすごく盛り上がった年だった(結局ドーハの悲劇で出場を逃すことになるのだが)。
もちろん僕もそのうちの1人で、とても熱心に日本代表を応援していて、それまでの予選は全試合欠かさず、テレビでしっかり観戦していた。
が、その日の夜、台風は案の定、我が家の屋根の上に取り付けられたBSのアンテナをユラユラと揺らしまくり、ブラウン管を砂嵐状態にしてしまったのだ。
でも僕にとっては、それはどうしても観たい試合だった。
「台風に負けるものか!」と1人屋根の上に飛び出し、激しい風の吹きすさぶ中、体をブルブル震わせてアンテナが動かないよう両手でしっかりとそれを支えながら、首を伸ばして部屋の中のテレビの画面を一生懸命見つめていた。
視線の先にあった砂嵐はホンモノの嵐に変わったが、でも薄目をこらすと、その嵐の奥に、試合の映像をうっすらと観ることができたのだった。
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アフリカ大陸の端っこに吹く風は、その15年前の出来事を僕に思い起こさせるほど激しく、そして強烈だった。
後ろに乗ってる嫁がたまに何か口走っているが、風の音にかき消されて、何を言ってるのかよくわからない。
後で聞いた話では、「風がひどくて飛びそう」とか「危ないよ、あきらかに右に寄りすぎ」とか言ってたらしいのだが、僕の耳には「カズがひとりで独走」とか「危ないよ、柱谷、右に寄りすぎ」とかいう感じにしか聞こえてこなかった。

まあしかし、そんなこんなで風の中を突き抜けながら4時間ほど走りまくり、まずはケープポイントという地点に到着。
丘の上にある灯台の所からは、広大な海の姿を眺めることができたけど、同時に、風で髪の毛が逆立ちまくった、スーパーサイヤ人みたいな観光客たちの姿も拝むことができました。

そして、いよいよ喜望峰へ。
ケープポイントからバイクに乗って10分ほど走ったところに、喜望峰は存在していた。
「これが喜望峰か・・・」
そのスマートな名前とは裏腹に、それはまるで険しい崖のように見えた。
ついにアフリカ大陸の終着点にたどりついたんだ、と感慨に耽りながら岬の上へと登っていく。
さっきまであれだけ嫌だった強風が、ここでは何か心地いいとさえ感じてしまう。喜望峰にはそういう魔力があるのかもしれない。
足を踏み外さないよう慎重な足取りで岬の先へと進んでいくと、そこには果たして、圧倒的な大海原の姿が広がっていた。
どこまでもどこまでも続く青々とした海だった。

はるか昔、大航海時代にバルトロメウ・ディアスにより発見され、「嵐の岬」と名付けられたこの喜望峰には、500年以上経た今も嵐のような風が吹きつけていた。
眼下には、崖を崩してしまうのではないかと思うほどの、激しい荒波が打ち寄せている。
この海の先には南極大陸だけしかないんだよな・・・。
岬の先に立ち、そんなことを考えていたら、言いようの無い達成感がジンワリとこみ上げてきた。
結婚、出産、進学、死別・・・、人生の中には色んな節目が存在するが、この喜望峰に到達できた今日という日を、そんな節目のひとつとして、自分の中で大きく位置付けてもいいような気がした。
潮の香りの全く漂わないその岬には、厳しい自然を象徴するような、激しい風の音と波の音だけが、鳴り止むことなくいつまでも響き渡っていた。

まあそんな感じで、喜望峰で気分に浸った後は、また風に吹かれながらバイクに乗ってケープタウンへ。
途中、ボルダーズ・ビーチという所で超大量のペンギンの姿を見て、ちょっと気持ち悪くなったりもしたけど、まあなんとか日が暮れる前にケープタウンへ戻ってくることができたのでした。
ということで、アフリカ大陸なんとなく縦断、この数ヶ月いろんなことがありましたが、これにて無事達成でございます!
いやあ、あっぱれ。

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