2008年4月 7日 の出来事 |
楽しい町 -マラケシュ-
昼前に起床し、階段を上って宿の屋上へ向かう。
実はここ数ヶ月、目を覚ました後も「今どこの国にいるんだっけ?」と何秒間か考え込んでしまう日々が続いていた。
移動ばかりで宿を点々としていたというのも理由としてあるのかもしれないが、なによりアフリカの宿というのは部屋の中にこれといった特徴があるわけでもないので、「いまザンビアだ」とか「いま南アだ」とか、直感的に自分の中で判断することができなかったのだと思う。
でも今日は違った。
この宿は部屋の中も含めて、壁や床いっぱいに繊細な幾何学模様の装飾が施されており、これでもかってぐらいにアラビアンな雰囲気を醸し出している。
その印象的な内装は、寝ぼけまくったフラフラの頭でも瞬時にわかるぐらい、「ここはモロッコだよ!」と僕に向かって強烈に訴えかけてきたのだった。

この宿の屋上には、「レストラン」と呼ぶにはちょっと大げさだが、食事できるスペースがあり、注文すれば従業員が料理を作って持ってきてくれる。
片隅のほうで、寝袋にくるまってボケーッと本を読んでる欧米人の姿も見えるが、もしかしたらこの宿では、屋上のスペース借りという形で安く泊まることができるのかもしれない。
今日はちょっと天気が曇りがちだけど、やはり屋上からの眺めは良いもんだなあと思いながら、1ページしかないメニューをのぞきこむと、「タジン」という料理がふと目にとまった。
そういえば旅先で会った人が「タジン、美味しかったよ」と言ってた気がする。
迷わずそのタジンを注文して、しばらく待っていたら、半熟の玉子に包まれた肉団子料理が出てきた。
土鍋の上でグツグツと音をたてながら湯気を立てているその料理を口に運ぶと、ジューシーな味わいが口の中いっぱいに広がっていき、ものすごい幸福感で体が包まれていったのだった。
あー、美味い!!
予想以上に美味しくてビックリしてしまった。
カサブランカで食べた魚料理も美味かったし、モロッコの食事って結構いい感じなのかもしれない。

さて、モロッコといえば革製品。
というわけで、伝統的な技を身につけた職人があふれる旧市街には、「タンネリ」と呼ばれる皮なめし作業場が存在する。
ポストカードとかでもよく目にするタンネリ。
僕らがモロッコで一番見てみたいと思っていたのは、そのタンネリなのだが、あいにく空が曇り模様なので、タンネリ観光は明日に回すことにして、今日は特に目的もなく気ままに旧市街を散策することにした。

旧市街の奥へ入っていくと、たくさんの人とたくさんのお店が異様なほどにあふれかえっていた。
マラケシュの旧市街は「スーク」と呼ばれる市場の集合体でもある。
11世紀の昔から、サハラ砂漠を越えるキャラバン隊の交易基地だったマラケシュでは、商業や手工芸などが大いに発達し、職人たちが工房と商店を兼ねたお店を構え、しだいに同業者ごとに区画を作っていった。
それがスークの起こりと言われているが、今でもこの町の旧市街には、それぞれ扱う品によっていくつにも区分けされたスークが、所狭しと寄り集まっている。
網の目のようにめぐらされた細い路地、その路地の両側に色とりどりの商品を山のように並べるたくさんの店、そしてそこで商品を手に取りながら買物を楽しむ地元民と観光客たち、その横をトボトボと歩く荷物運びのロバ・・・。
視界の悪さも手伝って、その圧倒的なゴミゴミ感があふれるスークの中を歩いていると、まるでタイムスリップしたような気分にもなったし、異次元世界の迷路の中に迷い込んだような不思議な気分にもなった。
でもとりあえず、「歩いてるだけでもすごく楽しい」と感じたのは確かだった。
スークの裏手のほうへ入っていくと、先ほどの喧騒とは打って変わって、そこには落ち着いた静かな空間が広がっていた。
おそらく民家が並んでいるのだと思うが、赤茶けた壁が並ぶ細い路地には人通りもほとんどなく、表の騒がしい音も全く響いていない。とてもユックリとした時間がしめやかに流れていた。
生活の場としての空間がそこにはあり、古くから培ってきたイスラムの都市造りの知恵というものが、そこに活かされているのだろうなと思ったりした。

スークで革製のサンダルを買った。
買物をするつもりはそんなに無かったのだが、アフリカの旅路の中でサンダルがひどくボロボロになってしまっていたので、嫁に猛烈に勧められて思い切って買うことにしたのだ。
後で自分が買物するための口実作りという嫁の魂胆(アンタが買ったんだからワタシも的な)は見え見えだったが、そのうちサンダルを買い換えなきゃと思っていたところだったので、まあいいだろう。
しかしこのサンダル、なんか少しクサいんだけど、このニオイは取れないんだろうか・・・。

夜は、宿のすぐ近くにある、旧市街の中心ジャマ・エル・フナ広場、通称フナ広場へ。
古くは公開処刑場だったというこの広場、その名前はアラビア語で「死者たちの集会」というオドロオドロしい意味らしいのだが、実際は、楽器の音や呼び込みの声が響き渡る、ものすごく活気と熱気にあふれた楽しげな広場だ。
夜なのに人がワンサカあふれかえるこの世界遺産の広場には、屋台の肉を焼く匂いと煙がそこらじゅうに充満しており、そんなモクモクとした中で、たくさんの大道芸人たちがワイワイやりながら得意の芸を披露して、人々の喝采を浴びていた。
騒がしいといえば騒がしいけど、すごく心地の良い騒がしさだ。
そのお祭りみたいな光景を眺めながら、「毎日が祝日」というのはこのことだったんだなと、深く深く納得した。
いやあ、楽しい町です、マラケシュ!

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