2008年4月 8日 の出来事 |
恐るべき皮なめし -マラケシュ-
くせーー!!!
旧市街の中にある皮なめし作業場には、鼻を捻じ曲げてしまいそうな強烈な悪臭が、ものすごい濃密さで充満していた。
「これを鼻にあてなさい」
作業場の親方と称するオヤジは、そう言いながらミントの葉を僕たちにくれたが、それで鼻の穴をふさいでみたところで、その悪臭は隙間から容赦なく鼻の中に入ってくるため、気持ち悪さに変わりはなかった。
なんか小便味のガムを食べてるみたい・・・。

今日は念願の皮なめし作業場に見学にやってきた。
天気も良かったので、絶好の皮なめし日和だなと思って。
が、そんなホノボノ気分の僕らをあざ笑うかのように、皮なめしの悪臭は恐るべき破壊力で僕らの嗅覚に襲いかかってきたのだった。
作業場に近づいているときから何となく感じてはいたが、それにしてもこんなにヒドいとは。。
昨日買ったサンダルがクサかった理由はこれだったのだ。こんなニオイが漂う作業場で皮なめしされてたら、そりゃクサくなるわ・・・。
聞くところでは、この鼻をつく刺激臭は「鳩のフン」によるものだそうだ。
どうやら鳩のフンに含まれているアンモニアが皮を柔らかくしてくれるらしく、そのフンが大量に入った水溶液に浸して、皮をジャブジャブなめしてるみたいなのだ。
それを聞いたとき「なんじゃそりゃ!?」と思ってしまったが、しかしこの皮なめしの技術が、数百年もの昔から職人たちの手によって脈々と引き継がれてきた由緒正しきものであるということは、疑いようの無い事実だった。
この悪臭を伴う作業工程もそして鳩のフンも、この国の伝統であり文化なのだ。
そう考えると、このニオイに何か洗練されたものを感じられなくもないな、と一瞬思ったけど、やはりそれは全くの思い違いで、相変わらずその強烈な悪臭はズケズケと鼻の中に侵入してきて、不思議な化学反応を起こしながら僕の嗅覚器官を思いっきり不快な状態にしてしまうのだった・・・。

親方のオヤジに連れられて2箇所の皮なめし作業場を見て回った。
職人たちは、ものすごい色をした水があふれる桶の中に体を沈め、その中で皮を洗ったり踏みつけたりしながら一生懸命作業に取り組んでいた。
心から「お疲れ様です」と言いたい気分だった。
よくこんな悪臭の漂う中、しかも悪臭の中に身を沈めながら、がんばって仕事やってるよなあ・・・。
モロッコ人の職人魂に感服です。
かなり圧倒されっぱなしの皮なめし作業場だったけど、でも実は、僕の見たいと思っていた作業場とはイメージがちょっと違っていた。
フェズという町のほうが皮なめしは有名らしいので、僕が思い描いていたのはたぶんフェズのほうにある作業場だったんだと思う。
というわけで、少し憂鬱ではありますが、次なる町フェズでもまた悪臭を放つ皮なめし作業場に行ってきます・・・。

皮なめしを見学した後は、旧市街の中を歩いて見て回った。
グニャグニャに曲げられた不思議な形の金属が並べられた鍛冶屋のスーク、色とりどりの美味しそうなフルーツが店先にワンサカあふれる果物のスーク、暖色系の照明の下で独特のミステリアスな雰囲気を漂わせている香辛料のスーク、思わず見とれてしまいそうな美しい金糸銀糸の刺繍が施された服飾を扱う民族衣装のスーク・・・。
小一時間ほど歩いただけなのに、マラケシュの旧市街は本当に様々な顔を見せてくれた。
これまで世界の色んな市場を見てきたけど、これほど色鮮やかで個性的で楽しげで賑やかな市場は他にないんじゃないだろうか。
数百年前、色彩の無い単調なサハラの過酷な砂漠を乗り越え、この交易都市マラケシュにたどりついたキャラバン隊員たちは、どんな気持ちでこの町を歩き、どんな思いを抱きながら旅路へと戻っていったのだろうか。
印象的な絞り染めの布が暖簾のように風にはためいている染物のスークを歩きながら、そんなことをちょっと考えたりしたのだった。

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