2008年5月30日 の出来事 |
鉱山ツアー(2) -ポトシ-
鉱夫たちに先ほど購入したオミヤゲを渡しながら、鉱山の中をどんどん進んでいった。
すれ違う鉱夫たちの顔を見ると、だいたい皆、頬を膨らませてムシャムシャと口を動かしながらコカの葉を噛んでいた。
あのコカインの原料として有名なコカの葉だが、この国では使用・所持・販売ともにまったく合法の健全な植物として扱われている。というより、生活に欠かせない日用品として暮らしの中にしっかりと根を下ろしている。
鉱夫たちは基本的にこの葉っぱをそのまま口に含んで噛んでいるが、ボリビア人の大多数はこれをお茶にして毎日のように飲んでいるのだ。
昔はコーラの中にコカの葉の麻薬成分が入っていた(つまりコカ・コーラ)というのは有名な話だが、このコカの葉にはいくつかの効能があると言われている。
一番の効能は、頭痛や体の不調など、高山病の症状を和らげてくれるというものだ。そのためか、ガイド氏も鉱山の中に入る前、「これを噛みながら見学するように」と言って、僕らにコカの葉を分け与えてくれていた。

また空腹を忘れさせてくれる作用もあるようで、鉱夫たちはコカの葉を噛むことで、食事もとらずに一日中鉱山の中で労働にはげむことができるのだそうだ。
その他、疲労感を薄れさせる、眠気を忘れさせる、恐怖感を喪失させる、などといった効能(というか麻痺作用)もあるそうな。
そのためコカの葉は、超過酷な重労働を強いられている鉱夫たちにとって、無くてはならない超マストな重要アイテムとなっている。
机の上に大量のユンケルを並べて徹夜作業にはげむ締め切り前の漫画家の先生よろしく、ボリビアでは鉱山労働者たちがコカの葉を一日中ムシャムシャやりながら、命をすり減らして毎日毎日採掘作業に取り組んでいるのだった。

そんなムシャムシャ風景に、ちょっとイエメンのカートを思い出したりしながらさらに奥へと進んでいくと、なんだかちょっと不思議なエリアに突入した。
よくわからないが、人形みたいなものが何体か立っていたり、こまごまとした模型のようなものがいくつか置いてあったりする変な空間だった。
「ここがミュージアムです」
ガイド氏の言葉に耳を疑った。たしかにツアーの予定に「ミュージアム見学」という項目があったのだが、まさか鉱山の中にミュージアムがあるとは思ってもみなかった。
鉱山の外にあるちょっとした博物館のような所を訪れるのだろうと思っていただけに、かなりビックリしてしまった。
しかも、展示物は野ざらしにされているため保存状態は最悪で、考古学調査中の遺跡から発掘されたばかりの土器みたいな感じで、全ての展示物が白っぽくホコリまみれになっていた。
なんというか、既成の概念を打ち破るミュージアムだった。
ていうか、暗すぎてよくわからんし・・・。

ミュージアムの奥にはティオがいた。
ティオとは、スペイン語で「伯父」という意味なのだが、ここでは坑内の安全を守る神様のことをそう呼んでいる。
石で造られた彼は、ちょっとした休憩所のようなところに、どっしりと腰を下ろしていた。
なんだか少しファンシーな雰囲気も醸し出しているティオだが、神様と言われればそんな感じに見えなくもなかった。どちらかといえば悪魔のような感じがするけど。
鉱夫たちは彼を畏れ敬い、毎朝、現場に行く前に彼に挨拶をし、仕事が終わるとお礼を言って帰るのだそうだ。
誰が添えたのか、くわえタバコがまたいい感じに似合っていた。
「こうやるとティオは機嫌がよくなるのです」
と言うガイド氏と一緒に、オミヤゲとして買ってきたアルコール度数90%を越える強烈な酒を彼のニョキッと伸びた股間にかけると、ほんの少し彼の表情が緩んだように思えたのだった。

その後、立てかけられた頼りない木のハシゴを上っていったり、頭が何度もぶつかるようなすごく狭い坑道を進んでいったり、ここに落ちたらもう最後って感じの深い真っ黒な穴の横をソロリソロリと歩いていったりして、ようやく鉱山の外へ脱出することができた。
鉱山の中は空気は悪いし圧迫感もあったし苦しかったし危険な場所も多かったので、とりあえず外に出られてホッとした。
それにしてもこんな所で毎日働いてる鉱夫たちには、尊敬の念を抱かずにはいられない。いやいや、本当にすごい。
さてさて、先ほど「ツアーの最後には、なにやら楽しげなイベントもある」と書きましたが、これよりそのイベントの開始であります。
その前に、さっきのクイズの回答発表。売店のオバちゃんが持っていたあの棒の正体は・・・
じつはダイナマイト!!
オバちゃんが手に持って振り振りしていたのは、採掘作業には欠かせない爆発系アイテムの代表格ダイナマイトだったのでした。
というわけで、楽しげなイベントとは、ずばりダイナマイトの爆破!
売店で購入してきたダイナマイトを使って、鉱山採掘時に行われているようなズドーンっていう爆破を体験することができるのであります。
まずは、爆発可能な状態にさせるため、封をとき、緑色の粘土状の本体を手で揉みながらネリネリする。
もう揉んでる時点で爆発してしまうんじゃないかと不安になったが、ガイド氏によると、「この状態では100%爆発することはない」とのこと。ピンク色をしたアンモニアの粒で周囲を包み込まないと爆発しないらしい。

ネリネリした後、アンモニアの粒で包み込み、ダイナマイトの導火線に火をつけた。
精神的に導火線に火がつくことはこれまで何度もあったけど、実際に導火線に火をつけるのは、たぶんこれが生まれて初めての体験だった。
「ジジジジ・・・」と音を立てながら導火線を短くしていくダイナマイトを、ドリフのコントのようにメンバー間で渡し合ったりしてちょっと緊張感を楽しんだ後、いよいよダイナマイトが爆発!
その模様は、先生撮影の以下動画でご覧くださいませ~。
そんな感じでツアー終了。
体力的な面も含めて色々と大変だったけど、でも非常に充実した満足度の高いツアーだった。参加して大正解。
ダイナマイトをコネコネして爆発させたりするなんて、普通できないだろうしね。
ツアーから帰ってきた後は、テキトウに町散策した。
にぎやかな市場の中をぐるぐると偵察したり、路上で売ってるチープな感じの昔風アイスクリーム(アイスクリン?)を食べ歩きしたりしながら、世界遺産の町を楽しく闊歩。
あと、町の中心部にあるラ・コンパニーア・デ・ヘススの塔に登り、塔の上から美しい赤屋根の広がるポトシの町をボケーッと眺めたりした。
夜は夜で奮発して、ちょっといい感じのレストランに入って贅沢ディナー。
薄暗い店内で、久しぶりにビールを傾けながら美味しい食事に舌鼓を打ち、店内で行われていたアンデス調の生演奏を楽しんだのだった。
ダイナマイトを爆発させた日に聴く「コンドルは飛んでいく」。
いやあ格別でした・・・。

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