2008年5月31日 の出来事 |
女従業員との戦い -ポトシ→ラパス-
自国通貨ボリビアーノが弱く、80年代に年間8000%を越える超インフレを起こしたことのあるボリビアでは、ボリビアーノとともにUSドルが広く流通している。
まあ途上国にはよくあることだけど、ボリビア国内ではドルがそのまま使えるお店が結構あり、一部の外国人向けのツアーなどは逆にドルでしか代金を支払えなかったりもする。
もちろん町の中には両替商もたくさんいるし、ドル現金をおろすことのできる銀行のATMまであったりするのだ。

で、ポトシで泊まったこの宿も、ご多分にもれず宿泊代の料金表にドルとボリビアーノ両方の金額が書かれており、ドル払いが可能っぽかった。
しかも、現在の公定レートから計算すると、かなりドル払いのほうがお得。
というわけで朝、宿をチェックアウトする際、フロントにいた女従業員に2泊分の宿代としてドル現金16ドルを差し出した。
が、この女は僕のドル払いを完全に拒絶してきたのだった。
理由も述べず、ノー、ノー、ノー、ノー、ノー、ノー!
普通に考えたら、2つの通貨で金額が記載されてたら、どちらで払ってもオッケーってことだと思うのだが、この女にはその道理が全く通用しなかった。
まるで壊れたロボットのように、面倒くさそうにダルそうに、女はひたすらひたすら首を横に振り続けていたのだった。
結局、10分ぐらい言い争った。けど、全く埒が明かなかったので、最終的にこちらが折れて、しょうがなくボリビアーノで支払う羽目になった。くっそー・・・。
しかしこの女従業員、本当に感じが悪かった。やる気はなさそうだし、態度はでかいし、理屈は通じないし。
案の定その女は、「チッ」という舌打ちをかませながら、1ミリの微笑みも顔に浮かべずに僕の手からサッと宿代を奪い取り、「フゥ」という軽いタメ息をつきながら、かったるそうにお金を金庫の中へとしまったのだった。

今日は夜行バスに乗ってラパスへと向かう予定だ。
ポトシの町は雰囲気も良いので長く滞在したい気もするのだが、それ以上に「グルメの町」と言われるラパスに早く行って、胃袋を満足させたいという思いが僕らの頭の中で先行したのだった。
たった3日の滞在でポトシを離れることになってしまうけど、鉱山も見学できたし、ダイナマイトも爆破できたし、まあいいんじゃないでしょうか。
行こう思っていた町の近郊の温泉に立ち寄れなかったのは残念だけど、高山病も再発しなかったわけだし、よしとしよう。
宿をチェックアウトした後、バスの出発までヒマだったので町をブラブラと散歩。
やっぱりポトシはいい感じの町だなあとシミジミ感じながら、コロニアルな雰囲気漂うボリビアンな路地を気分良く歩き回ったのだった。

そして、夜。
宿に預けていたバックパックを取りに戻って、ちょっと共有スペースで休憩した後、さあそろそろバスターミナルのほうへ行こうかなって時に、またトラブルが発生した。
トラブルの相手はやっぱりあのクソ女従業員!!
そして、巻き込まれたのはマサだった。
マサはこの宿の有料ランドリーサービスを利用していたのだが、さきほど洗濯を終えて返ってきた洗濯物を確認してみたところ、Tシャツが何枚かなくなっていたのだそうだ。
宿側が洗濯中に紛失したか、もしくは確信犯的にパクったか、どちらかしか考えられなかったが、マサがこの件を追求しても、女従業員は朝と同様全く悪びれる様子も無く、「しょうがないじゃん」みたいな感じで偉そうにマサをあしらうだけだった。
んんん・・・。
いつもだったら、しょうがないなって苦笑いしながら落ち着いて打開策を考えるところだが、朝の件もあったので、これには僕も非常に腹が立ってしまった。自分の洗濯物ではないけれど、ものすごくイラッとした。
ここが日本じゃないってのは重々わかってるけど、でもこれが日本だったら土下座もんだよ、客から預かったモノを紛失するなんて。
それなのに、なんなんだよその態度は!
女従業員がそんな傲慢な態度をとり続けるので、当然のように我々日本人連合はランドリー代の支払いを拒否。そのクソ女を払いのけ、そのまま宿を出てバスターミナルへ向かおうとした。
食い逃げならぬ、洗濯逃げ。
しかし、その洗濯逃げの様子を察知したもう1人の男従業員が駆け寄ってきて、僕らが外へ出る前に、宿の出入口のカギを内側から閉めてしまったのだった。
なんと、まさかの軟禁状態。

しょうがないので、彼ら従業員軍団と交渉することにした。
しかし、「ランドリー代は払うから、そのかわり失くしたTシャツ分を弁償してくれ」、「そちらに非があるんだから、せめてランドリー代を安くしてくれ」などとこちらが譲歩案を出しても、相手は全く応じようとはしなかった。
奴らは、「四の五の言わず、ランドリー代として10ボリビアーノきっちり払えや、このボンクラが!」という主張を断固として曲げようとしなかったのだった。
そして途中から、なぜかうちらのほうが彼らに怒鳴られ始めた。
自分のことながら、まるで外国に恫喝されるニッポン国の外交を見ているかのようだった。もしくはコワモテな輩に丸め込まれる、地方から出てきたばかりの百姓のようだった。
くっそー・・・。
もうこの状況のアホらしさに、途中でやる気を失ってしまいそうになったが、がんばって気合いを入れなおし、声を荒げて次のように主張した。
「警察に訴えるぞ!」
すると、バカ従業員どもの口からこういう回答が返ってきた。
「そんなことしとったらバスに乗り遅れるさかい、素直に金払ったほうが身のためやぞ、あんちゃん!」
なんたる理屈。ヤクザの論理だ。
しかしたしかに彼らの言うとおり、バスの出発時間は刻一刻と迫ってきていた。もうあと10分ほどでここを出ないと間に合わない。
でも、こんな奴らに屈するのも日本人として情けないし、そもそも非があるのは向こうなのだから、彼らに言うとおりに従うってのが不快極まりない。
10ボリビアーノは日本円でせいぜい150円ぐらいだから、別に懐がそこまで痛むわけではないのだが、これはお金の問題じゃないのだ。プライドの問題なのだ。
ギリギリの時間まで、我々はヤクザの論理の前に悶えながら悩み続けたのだった。
うーん・・・。
しかし最終的には、背に腹はかえられんということで、プライドをあっさり捨て去り、請求通り10ボリビアーノを払うことにした。
くやしいけど百姓軍団の負けだ。
「まあしょうがないね」とボヤきながら、少しガックリした様子でマサがランドリー代の10ボリビアーノを差し出す。
と、今朝よりももっとすごい勢いで、クソ女従業員はマサの手の上のお札をササッと一瞬のうちに奪い取っていったのだった。なんたるスピード。
そして、そのときのクソ女の顔には、心なしか1ミリぐらいの微笑が浮かんでいるように見えたのだった・・・。

軟禁状態から開放された我々は、急いで宿を出て、タクシーに乗り込み猛スピードでバスターミナルへと向かった。
で、幸いなんとかバスの出発時間前にターミナルへ到着することができたのだった。
というか、ボリビアのバスは基本的に遅れて発車するので、仮に数分ぐらい遅刻したところで、全然大丈夫だったようだ。そこまで急ぐ必要もなかったみたいだ。
とりあえずホッと胸をなでおろしながら、出発するまでの時間、皆で先ほどの出来事をゆっくりと振り返る。
「いやあ、あの女ほんとにムカついたよなあ」、「まさか軟禁状態にされるとはね」、「ボリビアの洗礼を受けちゃったねえ」などなど。
大事なTシャツがなくなってしまい、タクシーの中では少し気を落としていたマサだったけど、この時にはもうだいぶ持ち直しているようだった。
しかし・・・、
マサが売店でお菓子を買おうと財布から金を取り出した瞬間、彼の表情は一気に梅雨時の空のようにドンヨリと曇ってしまったのだった。そして、次の瞬間、彼は天を仰ぎながら次のように叫び出したのだった。
「あーーー、間違ったーーー!!」
なんと、さっきランドリー代の10ボリビアーノをクソ女従業員に払う際、間違って50ボリビアーノ札を渡してしまったそうなのだ。もちろんオツリなんてもらっているわけもない。
まあ、10と50とでお札の色が似てるといえば似てるけど、しかしアホだ。。
どおりでクソ女が1ミリぐらい微笑んでたわけだ・・・。
そんなわけで、Tシャツもプライドもお金さえも無駄に失ってしまった悲しい男を乗せて、夜行バスは星空に包まれたボリビアの夜道を、首都ラパスに向け進んでいったのだった。

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comments
大変なめにあわれましたね。しかし、関西人として、この様な喩えに使われるのは不愉快に感じました。
>関西人さん
不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。
以後、表現に気をつけたいと思います。