2008年6月 7日 の出来事 |
断崖絶壁デスロード -ラパス→ルレナバケ-
「日差しが痛い・・・」
路上で体育座りしていた嫁はそう言いながら、激しい太陽の光から肌を守るため、タオルを頭の上にかぶせはじめた。
時計はすでに正午近くを示していたが、午前11時発のラパス発ルレナバケ行きの長距離バスは、依然として出発する気配をみせなかった。
まあボリビアなので、定刻通りに出発しないのは予想の範囲内だが、しかしこの強烈な日差しに晒された状態でダラダラと待たされるというのはやっぱりちょっとキツかった。
バスターミナルではなく普通の路上から出発するバスのため、待合室のような所も当然のように無く、路上で体育座りでもしながら気長に待つしか他なかったのだが、標高3,600メートルの町に降り注ぐお昼の強烈な日差しは、突き刺すようなトゲトゲしさを備えており、容赦なく僕らの肌を痛めつけてくるのだった。
せめてバスの中に乗せてくれよ・・・。
そうボヤきながらバスのほうに目をやると、僕らが乗る予定のそのバスに、縦列駐車しようとしていた別のバスがまるでコントのようにぶつかり、フロントガラスにヒビを刻むという寸劇を展開していた。
そして案の定、バスのドライバー同士で「悪いのはお前だろ」的な口論がスタート。出発がさらに遅れることが確実となった。
もう、早くしてくれ・・・。
再度そうボヤくと、隣に座っていた嫁がうなずいたのか、ピンク色のタオルが上下にコクリと動いたように見えたのだった。

「バモース!」
定刻から遅れること1時間半。ようやくドライバーの口から出発の号令が発せられた。
と同時に、待ってましたとばかりに乗客たちがドタドタとバスの中へと乗り込み始めた。
本日向かう先はルレナバケ。
ボリビア北部、アマゾンの入口に位置する小さな町だ。
「アマゾン」というとブラジルを連想する人も多いと思うが、実はアマゾンはブラジルだけではなく、南米の多くの国にまたがっている。
たしかにその70%はブラジルに属しているのだが、残りの30%は他の国の領土内にあるのだ。
総面積700万k㎡とも言われるアマゾンなので、30%でも200万k㎡超、日本が5~6個入る広さになるわけで、そんな広大な熱帯雨林がブラジル以外の他の国にも存在しているのである。山国としてのイメージが強いボリビアにも、その一部が属している。
というわけで、アマゾンの玄関口であるルレナバケの町へ行き、そこを拠点にアマゾン体験をしようというのが今回の目的だ。
聞くところでは、物価の安いボリビアなだけにアマゾンツアーも格安らしく、ブラジルの5分の1ぐらいの値段でツアーに参加することができるらしい。
ラパスを離れるのはちょっと寂しいけど、でもアマゾンではワニとかにもたくさん出会えるそうなので、なかなか楽しみだ。
乗客全員が乗り込んだのを確認すると、ドライバーはフロントガラスに入ったヒビをちょこっと気にしながら、ルレナバケを目指してブロロロローとエンジン音を響かせてバスを勢いよく発車させたのだった。

今回は結構な長距離移動だ。ラパス・ルレナバケ間はバスで片道20時間。到着は明日の朝となる。
南米での長距離移動にはまあ慣れてるのだが、しかし今回は、ルレナバケを楽しんだ後またラパスへ戻らないといけないので、往復で計40時間もバスに揺られなければならない。しかも行きも帰りも同じ道だろうし・・・。
そんなわけで、いまいち気乗りがしない今回の移動なのだが、しかしバスの車窓に広がる景色はなかなか見ごたえのある雄大なものだった。
アンデスの乾いた険しい山並みが窓の外にひたすらひたすら続く。
無骨だけどロマンのあふれる堂々とした景色。それは僕が旅に出る前に思い描いていたアンデスの姿そのものだった。
ときおり、谷間を舞う巨大なコンドルの姿が目に入ってきた。
そしてそのたびに、僕の頭の中に「コンドルは飛んでいく」のあの美しく哀しげな旋律がBGMのように流れていったのは言うまでも無いことだった。

ラパスとルレナバケの標高差は3,500メートルということで、バスは基本的にゆるやかな坂を下っていくような感じで前へ前へと進んでいった。
が、その坂は普通の道とはちょっと違っていた。
いわゆる「断崖絶壁」の道だった。
窓の外にアンデスの山並みが広がっている事実から考えれば当然のことなのだが、このバスが走る道もアンデスの険しい山の斜面を削って作られたものだった。
なので道の隣はもう崖。
谷底まで数百メートルはあるので、落ちたら確実に死が待っている。
しかもガードレールなんて無いし、当然のように道幅も狭いし、途中から未舗装のガタガタ道になっていったし、これまで何度か断崖絶壁を走ったことがあるとはいえ、今回もなかなかヒヤヒヤさせられるバス移動であることは間違いなかった。
対向車がやってくると、うちらのバスは崖側に車体を寄せてすれ違わなければならないのだが、あと10センチでも車輪が外側にズレたら谷底へ真っ逆さまだなというシーンが幾度となく繰り広げられた。

ちなみにラパス・ルレナバケ間には、「デスロード」と呼ばれる道が存在している。
いま走ってるこの道がそれにあたるのかはよくわからないのだが、まあそこも断崖絶壁の険しい道ということで、文字通り死人がたくさん出るデスなロードなわけです。そこでは毎年200人以上が谷底へ落ちて死んでるとか。
で、そんなデスロードを自転車に乗って爽快に駆け抜けようぜ!っていうのが、最近ボリビアで人気のデスロード・ツアーだ。
基本的に下り坂なので、自転車でもスピードがガンガン出るらしく、調子に乗ってとばし過ぎるとバランス崩して滑って転んで谷底へ真っ逆さま~ってことになるらしい。実際、ツアー中にイスラエル人とかが谷底へ落ちてよく死んでるそうな。
そんなわけで、安全面から考えると日本では絶対にありえないツアーだけど、さすがは誰でも手軽にダイナマイトをガンガン爆発できちゃう国ボリビア、懐の深さが違います。
その模様を収めた動画を見つけたので下に貼っときます。
アドレナリンが出まくってすごく楽しいらしいけど、高所恐怖症の僕には絶対ムリだな・・・。
![]() |



comments