2008年6月16日 の出来事 |
チチカカ湖と太陽の島 -コパカバーナ-
「あれってフェリーなのかな・・・」
チチカカ湖がくびれて少し狭くなった部分、ティキーナ湖峡。
先ほどまで僕らを乗せていた黄色いバスは、その湖峡を渡るためフェリーで対岸へと運ばれていったのだが、その運ばれていく様は、なんだかとてもヘンテコだった。
それはまるで、湖面に浮かぶ平たいお盆の上に超巨大なカステラをのっけたような、そんな感じだった。
あの小さくて薄っぺらいフェリーでバスを運ぶなんて・・・。
バスから一旦降ろされた僕ら乗客は、別のボートに乗ってそのフェリーの横を並走していたのだが、とりあえずバスの中に置いてきた荷物が湖の底へ沈んでしまわないことを願いながら、そのイカダみたいなフェリーが進んでいく様子を見守ったのだった。

でもそうした心配は杞憂だったようで、イカダフェリーは無事に対岸へと到着した。
そして僕ら乗客が乗り込んだのを確認すると、バスはコパカバーナへ向けて、再びブロロローと音を立てて進み始めたのだった。
コパカバーナは、チチカカ湖の南岸にある小さな町だ。
琵琶湖の12倍の大きさを持つ巨大な湖チチカカ湖は、その60%がペルー領、40%がボリビア領に属しているのだが、コパカバーナはそのボリビア側チチカカ湖のほとりに位置する、いわゆる国境の町である。
どちらかというと、チチカカ湖畔の町としてはペルー側のプーノという町のほうが有名だが、このコパカバーナからはチチカカ湖に浮かぶ「太陽の島」へ船で行くことができるということで、ペルーへそのまま一気に抜けるのではなく、僕らはラパスからまずはそのコパカバーナを目指すことにしたのだった。
なんてったって太陽の島は、インカ帝国発祥の地といわれている島なのだ。簡単に素通りするわけにはいかない。
名前もなんとなくロマンチックだしね。
まあとりあえず、黄色いバスはそれから快調に走り続け、1時間ほどでコパカバーナの町へと到着したのだった。

適当に宿を見つけてチェックイン。若干ラブホテルチックな内装だけど、適当に見つけたにしては悪くない宿だ。
しばらく部屋でゆっくりしていたい気分だったが、明日にはペルーへ抜けたいという願望もあったため、部屋に荷物を置いた後、急いで昼飯を胃袋の中に流し込み、午後1時半発の太陽の島行きの船に慌しく乗り込んだのだった。
さて、先述したとおり、太陽の島はインカ帝国発祥の地と言われているわけだが、それはこの島にまつわるある伝説に由来している。
その伝説によると、絶対的な神である太陽神インティが地上に文明をもたらすために遣わした人間(=初代インカ帝国皇帝)が、湖の中から現れて最初に降り立った地がこの太陽の島とされているのだ。
その初代皇帝の名前は、マンコ・カパック。
これまたとてもロマンチックな名前だ。ちなみにカパックというのは当時「将軍」を意味していたという説もあるので、マンコ将軍と言ってもいいのかもしれない。
湖の中から現れたときにマンコ・カパックがぐっちょり濡れていたかどうかは定かではないが、少なくともクスコ王国統治時代にマンコ・カパックが花開いたというのは確かだそうだ。
またマンコ・カパックは別名「マンコ1世」とも呼ばれていたらしいが、インカ帝国最後の皇帝は「マンコ2世」と呼ばれていたそうだから(1541年マンコの乱の後に暗殺)、なかなかこのあたりは興味深い。
まあ彼のことを掘り下げ始めるともうキリがなさそうなので、ここらへんでやめときます。
とりあえず僕らは、インディヘナのオバちゃんたちと一緒に船に乗り、ゆらゆら揺られながらそのマンコ・カパックが降り立ったといわれる伝説の島へと向かったのだった。

太陽の島に到着後、島の斜面を上り頂上のほうへ。
ボリビアの空気の薄さにはだいぶ慣れているとはいえ、ここも標高3,800メートルということで、斜面を上るのはものすごくキツかった。マンコ将軍のことを考えながら、ハアハアと激しく息を切らせて頂上まで上ったのだった。
しかし頂上からの眺めはやはり素晴らしかった。
島の斜面に広がる段々畑の景色ももちろん印象的だったのだが、何より青く青く輝くチチカカ湖の姿がとても美しかった。
それはとてもファンタジックで、神秘的で幻想的な景色だった。
なんだか子供の頃に想像していたドラクエの中の世界が目の前に広がっているような気がした。
ゾクゾクするようなワクワクするような、そんな気持ちに包まれたのだった。


太陽の島の観光を終えてコパカバーナの町へ戻ってきたころには、すでに時計は夕方5時を回っていた。
今日はなんだか一日が早かったような気がする。
先ほどまで青かったチチカカ湖は、夕日に照らされてオレンジへと変色を遂げ、昼間とはまた違った趣と神々しさを湖面から醸し出していた。
コパカバーナの町自体も夕焼けに包み込まれ、鳥肌が立つぐらい幽玄な黄金色に染まっていた。
空が近くて空気が薄いせいかもしれないが、その夕焼けはものすごく深くて濃いものように感じられた。とにかく素晴らしい夕焼けだった。
「ボリビアってやっぱり魅力的な国だなあ・・・」
夕日に照らされながら、あらためてそう感じずにいられなかった、ボリビア最後の一日だった。

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