少数民族フェスティバル2008.3.12 written by 夫

エチオピアのジンカという村を訪れた時のこと。とても幸運な出来事に遭遇した。

このジンカ、世界最貧国とも言われるエチオピアの中でも田舎のほうの奥にあるような村で、お尻が30センチぐらい浮いてしまうようなガタガタの未舗装道路を数時間バスで揺られてやっとたどりつけるような所にある。

当然のように、一日の大半は停電・断水するようなインフラも整っているとは言いがたい場所だ(エチオピア全土でそうだけど・・・)。普通、そんな所に用もなく行く外国人はいないと思うが、この村には結構な数のツーリストが訪れ、まあまあの賑わいを見せている。

理由は、少数民族(以下「族」と記載)に会えるから。

特に、唇にデカい円盤をつけた有名な「ムルシ族」の村も近く、ジンカのマーケットによく顔を出すと言われている。僕らも、マーケットで少数民族に会えたらラッキーだし、会えなかったら四駆をチャーターして村まで訪ねようかなあ、ぐらいの気分でこのジンカを訪れた。

が、なんとなんとジンカに到着した日の三日後に、近辺の17民族が集結する少数民族フェスティバルが開催されるという幸運に出くわしたのだった!

数千人は見物客が訪れたんじゃないかと思うほど規模の大きかったこのフェスティバルだが、会場には我々以外の日本人の姿は無し!
(後日聞いた情報によると他に1名いたらしい)

そんなスーパーラッキーな体験、少数民族フェスティバルの模様を、チョロっとかいつまんでお届けします!


●はじめに


このフェスティバルの正式名称は「SOUTH OMO PEACE CONCERT」。SELAM-Cという団体と、エチオピアの学生機構および地方政府が主催するイベントだ。

このあたりでは、いまでも民族間の対立が激しく、たびたび死人を出すほど激しい争いが起きるらしいが、そんな民族間の対立をなくしてピースフルな関係を築き上げるというのを目的に、このイベントは開催されたようだった。

このフェスティバルは、シンポジウムやプロミュージシャンによるコンサートなど、いくつかの題目で構成されるが、今回はそのうちのメインイベントである、少数民族によるダンスショーについてのことを中心に記述します。

フェスティバルのポスター


●開幕前の様子


夕方5時、フェスティバル会場である小学校横の広場には、たくさんの子供たちがあふれていた。この村にこんなにもたくさんの子供がいたのか、と思うほどあふれかえる子供たち。皆、ものすごくボロボロの服を着て、あたりを埋め尽くしていた。

僕らが会場に行くと、子供たちがたくさん寄ってきて、「チャイナ!」とか「ユー、ユー、ユー!」とか、いつものような掛け声が始まった。毎日百回ぐらい聞く言葉なので慣れてはいたが、こうたくさんの子供たちに言われてしまうとちょっと困ってしまう・・・。おまけに今日は、ずっとこの場にい続けなければならないのだ。

というわけで、フレンドリーに振る舞ってみる。

・・・と、いつもだったら調子に乗ってズケズケとウルサイ言葉を浴びせかけてくる子供たちも、なんとも楽しそうに僕らにニコニコ笑顔を振りまいてきた。

このフェスティバルの雰囲気がそうさせるのか、それとも僕らが日頃から身構えすぎていたせいか、子供たちがとても親しげに接してくるように感じて、気持ちが和らぐ。


会場には、クラスの集合写真とかで使うような台座が、特設の長イスとして設けられていた。50人ほどがゆったり座れるぐらいの感じだ。

笑顔を振りまく子供たちと、その長イスの所で戯れていた。言うまでもないことだが、言葉は通じなくても何となく楽しい感じというのはお互い通じ合うものだ。

しばらくすると、怖そうな顔をしたポリスが何人も駆け寄ってきた。

木の枝を振り回しながら・・・。


ビュンビュンと振り回される枝から逃げるように子供たちは長イスから離れていく。

ポリスは動物でも扱うかのように子供たちを払いのけ、長イスの後方5メートルの位置に、持っていた枝で線を引き、「ここから入るな!」みたいなことを言っているようだった。

どうも長イスはVIP用らしく、事務局員や招待された政治家たちが座るために用意されたものみたいだった。ちょっと残念。。

引き続き子供たちと戯れながら時間をつぶす。エチオピアの子供ってウザいからちょっと敬遠してたんだけど、これを機に結構好きになってきたかも!

しばらくすると、あたりが騒がしくなってきた。

広場の入口のほうに目を向けてみると、トラックが荷台にたくさんの族たちを乗せて、ゾクゾクと会場入りしてきていたのだった!

お〜、異様な光景だ・・・。

ステージの裏手に族たちがたくさん集まりだし、リハーサルっぽいことをやり始めた。ウホウホ声が徐々にあたりに満ちてくる。いよいよスタートだ・・・。



●ウホウホ・パラダイス!


広場には、村中の人間が勢揃いって感じで、ものすごい数の人々があふれていた。そんな中、ところどころに観客として来ている族の姿も見えて、その光景がまた結構面白い。

僕が見たい見たいと思っていた、ニャンガダム族らしきヤツもいた。


誇り高きニャンガダムの男たちは、常に枕を持ち歩いているということで有名だ。

いついかなる時でも敵の襲撃に備えて寝る準備だけは怠らない、というポリシーを持っているかどうかは不明だが、まあ日本国の象徴が天皇であるように、ニャンガダム族の象徴は枕なわけです。

彼らのうちの何人かは、案の定、イベントが始まるまで枕を下に敷いて寝そべっていたのだった・・・。

観光客を見ると自分の枕を「買わないか?」と言ってくることがあると聞いていたが、使用中のためか売りつけられることもなくちょっと残念。。

まあ、そんなニャンガダム族はさておき、メインイベントたる族たちによるダンスショーが、前方ステージで始まった。

お〜、なんかワイワイやってるぞ!

まずはじめの族たちがステージ上に現れ、ヘンテコというかメロディーが無いというか、何とも表現しがたいミュージックを口ずさみながら、狂ったようにダンスを踊り始めた。

個々人を見ると一見規則性がないように思えるが、全体として見ると調和した感じのする、まるで人間の細胞組織のような動き。とても不思議なダンスだ!

不器用にマイクを使って吠えてる姿がまたいい感じ!

足の動きにあわせて立つ砂煙もまたいい感じ! いやいや、こりゃすごいわ・・・。

ちなみに「ステージ」と表現しているが、そこはただの25メートルプールぐらいのスペースにすぎない。下に何か敷いてあるわけでもなく、ただ地面があるだけだ。そのステージの三辺を包むようにして、さきほどのVIP席が設けられていて、「お酒大好き、お金も大好き!」みたいなカップクのいいオジサンたちがドーンと座っているのだった。

というわけで、残念ながら5メートルラインの後ろで見ていた我々には、ステージ上の族の姿が、はっきりとは目に入らない。おまけに、照明もなぜか前方からのみ照らされているため、逆光になってしまっている。

「もうちょっと頭使ったほうがいいじゃねえの!?」 という僕のボヤキも族たちのウホウホミュージックにかき消され、夕暮れ時の空の中に消えていった・・・。

せっかくのこんなすごいステージなのに、このまま暗くなったら何も見えないぞ・・・。そんな不安を抱いていたら、嫁が5メートルラインを越えて、スルスルとVIP席のほうへ向かって歩き始めた。

おいおい何やってんだ?と連れ戻そうとしたが、なぜかポリスや警備員に何のオトガメも受けずにステージの目の前でショーを鑑賞する嫁。

なんで・・・?

とりあえず、一人でステージの近くを離れ、広場の外れのほうへと行ってみる。 ・・・と、なんとそこでも族たちがウホウホ踊ってるではないですか!!

どうも自分たちの出番が回ってくるまで興奮を堪えきれない族たちが、ステージ外で騒ぎ出しているようだった。
お〜、メチャクチャ目の前で見れるし、こりゃマジですげ〜!!

色んな族が、次々とステージ外でハチャメチャに騒ぎ始める!

木でできた槍のようなものを振り回しながら「どけどけ〜!」みたいな感じでウホウホ踊る族たちもいれば、皆で手をつなぎながら輪になってひたすらジャンプし続ける族たちもいる。


化け物みたいな化粧をして、オッパイモロ出しでブルブルと変な踊りをする族もいれば、笛の音にあわせて、ひたすらあたりをクルクル周り続ける族もいる。



もちろんムルシ族もいた。

ちゃんと大きな円盤を唇にはめこんで、勇ましい目つきでウホウホと行進していた。

ムルシの女性たちは、その大きな円盤のために「笑顔を作ることができない」と聞いていたが、どうやら本当のようだった。

普段は写真1人1枚につき2ブル(約24円)を要求してくるというムルシ族も、このフェスティバル中はカメラを向けても何も言わない。タダで写真撮り放題!

族たちのジャンプにまじったり、一緒にわけのわからない歌を歌ったりしながら、暗くなるまでこのステージ外のウホウホ騒ぎを存分に楽しんだ。



空が暗くなると、さすがにステージのほうが(いくら逆光でも)見えやすいだろうということで、ステージ前から5メートル離れた元の位置に戻る。で、こっそりポリスの目を盗んで、VIP席のすぐ後ろにいた嫁の所へ近寄った。

すると、VIP席に見覚えのある人が座っていて驚いた。今朝、泊まっている宿の庭先で会話をかわしたオッチャンだった。彼は、なぜか流暢な中国語を話せたためその顔がとても印象に残っていたのだが、VIP席にいるということは、けっこうな偉い人なのだろう。もしかしたら政治家なのかもしれない。

しかしそんな偉い人が、あんなボロ宿に泊まっているというのも驚きであったが(この村にはそこぐらいしかいい宿がない!?)。 まあ何はともあれ、そのオッチャンのはからいで、うちらはポリスたちにオトガメを受けることなく、ステージに近いその場所でショーを堪能することができたのだった。

ステージには次々と色んな族たちが登場し、色んな踊りを披露していった。

逆光の中で踊り歌い狂う族たちの姿は、もうほんとに幻想的で、まるで夢の中の出来事のように映った。

案外、こんな幻想的な効果を狙った上での、逆光なのかもしれないな、とも思ったりした(たぶん違うだろうけど!)。

17民族全てのショーが終わると、フィナーレとしてステージに全民族が勢揃いし、そして全員で踊り歌い始めた。

総勢200人程いるであろう族たちがステージ内で入り乱れて暴れまくる!!

もう砂煙で何が何だかわからないが、楽しくてしょうがないことには違いなかった。もうなんと表現してよいのかわからないような異様な光景が目の前に広がる。

政治家のオッチャンたちが族たちの中に入って踊り始めたのを見て、僕らもステージ内に入り、族たちとともにウホウホと踊りまくった。

楽し〜!!





これだけたくさんの族と一緒に楽しい時間を過ごせるとは思わなかった。とてもとても素晴らしい少数民族フェスティバルだった。

この旅の中で、僕らが最も興奮したひと時だったのは間違いないだろう。

ちなみに、このフェスティバルに参加した17民族は以下の通りです(読み方不明なものがあるため、全て英語で表記)。

Arbore / Ari / Bacha / Bennna / Beraile / Bodi / Dassenech / Dime / Gnangatom / Hamer / Kara / Konso / Male / Muguji / Mursi / Murule / Tsemay

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