旅する本たち2008.3.17  written by 夫

エジプトのシナイ半島のダハブという町でのこと。


泊まっていた宿の談話スペースで適当にダラダラしてたら、同じくこの宿に泊まってる日本人旅行者A子さんがビックリした様子でこちらに声をかけてきた。

「え〜、それってもしかしてスナーク狩り!?」

そのとき妻が寝転がりながら読んでいた本は、たしかに 『スナーク狩り』 だった。20年ほど前に出版された、宮部みゆき著の推理小説だ。


まあ見た目は何の変哲もない普通の文庫本なのだが、A子さんは狐につままれたような表情で、その本を指差しながらこう続けた。

「それ、たぶん私が昔読んでた本だ・・・」

彼女の意味するところは、 「昔、スナーク狩りを読んだことがある」 ということではなく 「昔、その本の所有者は私だった」 ということであった。

つまり、彼女がどこかで手放したはずの本が、めぐりめぐって、妻の手元にあるのだった。

A子さんの記憶によると、数ヶ月前にトルコのイスタンブールの宿に、読み終わったその本を置いてきたということであった。対して、我々がこの本を手に入れたのはハンガリーのブダペストである。

ということは、遠くイスタンブールの地でA子さんがサヨナラした 『スナーク狩り』 が、他の旅行者の目にとまってその旅行者と共に西へと進み、東欧の街ブダペストでその人が手放した後、我々の手に収まったということになる。

もしかしたら、もっと多くの旅人の手を介しているかもしれない。

まあ、とりあえずその本が結構な長い旅路を進み続け、この時点でエジプトのダハブに存在し、元の所有者とそこで再会したというのは確かな事実だった。

表紙の汚れや、中に挟んであるシオリなどを見ても、間違いなくA子さんが以前に所有していた 『スナーク狩り』 のようである。

長旅を続けていると、醤油の味が恋しくなるのと同じように、どうしても日本語の活字が恋しくなってくる。

日本にいるときに読書が好きだった人はもちろん、あまり読書をに興味が無かったような人でも、旅に出ると結構な読書家になる。

たいていの旅行者が、バックパックの中に常時何冊かの日本の文庫本を忍ばせ、移動中のバスや列車の中、宿のベッドの上で寝転びながらヒマを持て余しているとき等に、これらを開き、読み耽るのだ。

当然、持っている本はいつかは読み終わることになるので、彼らはそうした読み終わった本を、他の日本人旅行者と交換したり、日本人宿に置いてある本と交換したりするわけである。たまに古本屋があるような街だと、古本として売買されることもある。

まあとにかく、旅行者たちは常に荷物の中身の充実度を気にするような人種であるから、読み終わった本がバックパックの肥やしになるということはほとんど無く、結構な短いサイクルで誰かの手へ次々に渡っていくのである。

そう考えると、この 『スナーク狩り』 の件も、たいして不思議な話ではないかもしれない。人間と同じように 「本も旅する」 というだけなのだから。

我々がこの旅行中に読んだ本を、備忘の意味もこめて以下に掲載しました(覚えてる本のみ。ガイドブック類は除く)。もしかしたら、めぐりめぐって、またどこかで我々の目にとまることになるかも!?

ちなみに 『スナーク狩り』 は、ケニアのナイロビで手放しました。今頃どこを旅してるんだろう・・・?



本のタイトル 著者 入手した場所 手放した場所
生物と無生物のあいだ 福岡 伸一 日本 成都 (宿で交換)
愛と幻想のファシズム(上・下) 村上 龍 日本 成都 (宿で交換)
冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行 ジム・ロジャーズ 日本 成都 (宿で交換)
フューチャリスト宣言 梅田 望夫
茂木 健一郎
日本 成都 (宿で交換)
常識として知っておきたい世界の三大宗教 歴史の謎を探る会 日本 バラナシ (宿で交換)
東方見便録 斉藤 政喜
内沢 旬子
日本 ラサ (旅人と交換)
13階段 高野 和明 成都 (宿で交換) ラサ (旅人にあげた)
ダライ・ラマ自伝 ダライ・ラマ ラサ (旅人と交換) アンマン (宿で交換)
蒼き狼 井上 靖 カトマンズ (本屋) ブダペスト (宿で交換)
ユダヤ教VSキリスト教VSイスラム教 一条 真也 アンマン (宿で交換) アンマン (宿で交換)
香田証生さんはなぜ殺されたのか 下川 裕治
アンマン (宿でその場で読んだ)
歴史の中の日本 司馬 遼太郎 アンマン (宿で交換) カイロ (宿で交換)
スナーク狩り 宮部 みゆき ブダペスト (宿で交換) ナイロビ (宿で交換)
狭き門 ジッド カイロ (宿で交換) ナイロビ (宿で交換)
ドグラ・マグラ(上・下) 夢野 久作 カイロ (旅人と交換) ナイロビ (宿で交換)
梟の城 司馬 遼太郎 カイロ (宿で交換) ナイロビ (宿で交換)
「危ない」世界の歩き方 岡本 まい ナイロビ (宿で交換) タンザニア(旅人と交換)
世界一周ビンボー大旅行 下川 裕治 ナイロビ (宿で交換)
幼年 福永武彦 ナイロビ (宿で交換)
僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 中島 らも ナイロビ (宿で交換)

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